ある日の私 4月

 

 朝起きて、洗濯機をセットする。

洗濯が完了するまでに、トイレ、健康水、犬のご飯、神様に水、そして、風呂に入る。

 洗濯を干し、テレビを観て、洗濯してあった母の着替えを籠に入れる。

 

 仕事に行く前に、父が通っている施設に支払いに寄る。

丁度、父が着いた所で私の顔を見て喜ぶ。

今日、時間があったら母の所(病院)に行くか?と聞きたかったが、若し忙しくて行

けないことになったらガッカリさせる。

行けるようだったら電話しようと思う。

 

 職場、朝コーヒー、仲間が作ってきてくれたご飯を食べる。

仕事、楽し、お喋り、楽し、合間にメダカにエサをやり、水草を見ると今年初めての卵。

 あっと言う間にお昼。

娘の手料理、テレビでベラルーシの女性作家が話していた。 心打たれる(バキューン)

 

 午後の仕事、あっ、犬の散歩。

そうだ! 出たついでに父を母の病院に連れて行こう。

父の携帯電話に電話する。やっぱり、喜ぶ。

 

施設に迎えに行くと、父、上機嫌でスタッフに話している。

「娘がぁ、女房の所に連れて行ってくれるんですよ」

 

先ずは、母にイチゴを買う。

甘いモノ好きな母、最近のブームは甘いイチゴ。

午後に売り切れていることが多い、獲れたてイチゴ、1パックだけ残っていた。

ラッキー。

車に入る風、気持ち良し。

「いい季節になったね」

「これからは、ビールだね」

「ビールはいいね」

「昨日、家にあったビール1本だけだけど置いてきたの分かった?」

「分かったよ、すぐ飲んじゃったよ」

「今日、買っていくべね」

「いいね」

「あと、カツオの刺身食べる?」

「食べるよ」

「じゃぁ、帰りに買ってくべ」

「でも、あそこの魚や左側だから生きがけに買った方がいいんじゃないかい」

私の家族は、夫も義理息子も父も男が言葉がキレイで文字にすると、どっちが男か分か

らない。

 

魚屋に、大きなホッケがあった。

先日、めちゃ美味しかったやつだ。

そこで、ホッケ好きの夫の兄を思い出す。

義兄の家は、病院のすぐ近くだ。そうだ、あと娘の家にも置いて行ってやろう。

 ホッケとカツオの刺身を、我が家も入れて4組買う。

娘の家に電話すると、出掛けていたので玄関のドアノブに引っ掛けて来る。

 義兄の家、駐車場に車を入れると家から飛び出してくるせっかちで親切な兄。

義姉には、母の為に5粒取った残りのイチゴをあげる

 

 病院、杖と何かつかまる物を探して歩く父。

なるべく、誰も頼らずに自分でやっていきたいんだと、いつものセリフ。

 父がトイレに入っている間にエレベーターを使わず車と病室を2往復。

ロッカーに洗濯してきた物を補充し、汚れ物を運ぶ。

 終わったと思ったら、ロッカーに貼られた支払請求書を見つける、受け付けは5時終了。

慌てて受付に行くと、5時15分。半分の柵が下りている。

 支払いは5時というのを頼み込んで支払いする。10日分で、6万円。

 

 病室に戻ると、まだ父が到着してない。

トイレに行ってみると、どうやったら水が流れるか分からないという。

 最近のトイレは水の流し方が色々で考えてしまうよね。

 

 母、喜ぶ。

仲が悪くて、喧嘩ばかりだった父の顔をずっと見ている母。ちょっぴりやけちゃう。

「イチゴ、甘いね」

3粒で終わりにしようと思ったが、食べたそうなのでやっぱりみんなあげる。

頭を掻いている曲がった細い指。

熱いお湯でタオルを絞り、頭や手を拭く。

「足の親指が痛い」と母。

父が布団をめくってさすっている。

靴下を脱がせてみると、曲がった親指が人差し指に喰い込んで離れない。

足の甲には点滴の針がテープで付けられている。

親指と人差し指の間にティシュを挟んでみた。

「もう、そろそろ帰るね」と言うと、

「元気でね」と母は父の顔を見た。

「お互い、ガンバロウな」と父は言い、二人の間に何とも言えない空気があった。

 

それから、父の靴を買いに行く。

自分で見て買いたいと言う父、店員さん親切。

迷っていたので2足買う。

 

帰りの道で父を車で待たせ、ビール、チーズ、柿の種、ハム、せんべい、ポテトチッ

プスなど買う。

 西北の空が、ピンクと紫に染まっていた。

 

父の家に。

荷物をおろしていると、娘から電話。

「もう間もなく帰るよ」

「今日、どうするの?」

「カツオの刺身買ったよ」

「やったー」

後は、自分でやるという父。

「じゃ、またね」

「うん、ありがとね」

 

 家にトウチャコー。ワシも、ビールだビール。

荷物をおろしていると、アレッ?

 刺身を父の所に下ろし忘れ。

車でもう一度行こうかと思ったが、何だかすごーく面倒な気持ちになった。

 そこに義息子のカッコイイ自転車が見えた。

そうだ!これで行こう。

 180の息子が乗る何やらカッコイイ自転車。

足がペダルに届くのがやっとだが、地面に足が届かず、真ん中に棒が通っているのが

気に入らないが、まぁ、いいだろう。

 籠にカツオを入れて出発。

私のママチャリとは、全く別物の踏みごたえ、何だかクルクル漕げて抵抗がない。

 暗い草の道、近道、街灯のない細道、時間は10分と掛からないが、フラフラ緊張。

 

 父の家、あれから戸締りをしていたのか鍵を掛けている音がする。

鍵を持って来なかった。チャイムを鳴らす。

「はーい」と父。

「はーい、今行きまーす。なんせ、年寄りなんで、早く動けませーん」

「お父ちゃーん、麻子だよ、ゆっくりでいいよー」

「はーい、まってくださーい、あいたた、あいたた」痛い足を引きずる音が聞こえる。

近所に聞こえる私の大声は、耳の遠い父には聞こえない。

 玄関が開く。

「あは、麻子だったのか」

「お客さん、忘れもので〜す。

カツオの刺身でーす」

「あ、そうか。今からイッパイだ」

「全く、あたしって忘れっぽいんだよ」

「違うよ、忙し過ぎるんだよ。

いっつも、やることイッパイだもんな」

「ちがーよ、ボケがきてるんだよ」

「いやいや、まだまだ大丈夫」

「そーかな」

「うん、大丈夫」

「じゃぁ、またね」

「ありがとね。気を付けてな」

玄関で手を振る父を振り返ろうとしたらバランスが崩れた。

あっぶねー、気を付けよう。

 

 暗道、草の道、近道から大通り。

ここを横切って隣の家の前で曲がったら、家。

 で、曲がった瞬間ふらついた。

ブレーキ掛けた。

ブレーキの利き、良過ぎ!

自転車急に止まって、私、宙に浮くの図。

 次に植栽の土に叩きつけられたカエルの図。

 

 股間と左手が変。

で、夜はシップして安静。

でも、ビールは飲んだ。

 

今朝、大丈夫みたい。な感じ。

 

 転んだ瞬間思ったこと。

25日のゴルフ、出来るかな?

 目の前には、息子の自転車のカッコイイライトが折れて落ちていた。

 

 毎日、面白い。

子供と話して遊んでいて、「もう、仕事だから」と、側を離れようとしたら

「おじ、おばちゃん。どこ行くの?」と言った。

あれ、ぜってー、「おじちゃん」って言おうとしてたな。

 

メダカ広場で小学低学年と就学前の子供達(男)と遊んでいたら、みんな

「おじちゃん」「おじちゃん」って大騒ぎだったのな、

 そしたら、小学生の子が急に何かに気が付いて

「おばさん、これ動かしてもいいですか?」なんて、「おばさん」って言い出したら

他の子も、「おばさん」になって、何故か敬語になってしまったんだ。

 何で、おばさんになると敬語なんだろうな。