脱水症状

 

 今ツルッパゲのT叔父ちゃんが、職人でバリバリだった頃、脱水症状になって

救急車で運ばれたことがあったことを思い出した。

 記録的な猛暑が続いた夏だった。

酷い脱水症状になると水を飲んでも受け付けなくなるらしい。

 一時は命が危ないとまで言われ入院したが、退院して間もなく飲み屋にその姿があった

らしい。

 

暫く雨が降らずパサパサに土が乾いていた時に草引きをした。

そこに花を植えようと水を掛けたが、水は土の上で水銀状の玉になり水溜りになったが

土と混ざらずにいた。

 スコップでかき回すとドロドロになるが、やはりその下にはしみ込んでいかない。

乾いた土の上で草引きをしていると、細かい雨が降り出した。

 細かい霧のような雨だった。

雨は、バケツで掛けた水を拒否していた土を音もなく湿らせていった。

 ユックリ、ユックリ、時間が過ぎて、硬い白い地面が黒く重くなっていくのを感じた。

 

 ドシャ降りの雨の後で、地面の下は乾いていることがある。

何でも、ユックリで、弱くて、優しい、長く続くものが、その一番奥まで届く気がする。

 

 脱水症状になったら、少しずつ水を飲むことで身体に入ると聞いた。

少しずつが大事だと聞いた。

 ボディブローなんかも、弱いみたいでも、後で効くんだよね。

 

 あっ、そういえば、前に指圧の先生が「強い指圧ってのは、案外効かないんだよ」って

言うのを聞いた。

 何故かというと、力が強いとこれは危ないと自然に身体が防御してツボの奥まで行か

ないようにするんだそうで、上手な人は、ユックリじんわり押して防御させずにツボに

到達するんだそうだ。

「何でも派手なモノっていうのは、そう大したことないんだよ」って、先生は言った。

     ナルホドね。