ゲスノキワミ

　最近のテレビを賑わしているらしいのが、ベッキーとゲスノキワミ（既婚らしい）の

不倫密会らしい。

　らしいというのは、どーゆー訳かワシは一度もそのテレビを観ていなかった。

ワシはテレビ好きで仕事以外の時はテレビをつけっぱなしにしている。

　なのにそれを報道している場面に一度も遭遇してなかった。そういえばモモエちゃんが

結婚した時も聖子ちゃんが結婚した時も一度も観ていない。

　何故かワシは皆が観てないものを観ることが多く、皆が観ているものを観ていないと

いうことがある。

最初に娘からその話を聞いた時は驚いたが、造り物のお菓子のような芸能人も血の通

った人間、色んなことがあるんだろうと思った。

　娘は、こんなことになってこれからどうなるんだろうとえらく心配していた。

ある所で、またその話になった。

「ねー信じられないよね、“あんな”男の何処がいいんだろう」

「そうだよそうだよ、“気持ち悪い”。全然ステキと思えない。今結婚してる奥さんと

結婚する時も前の彼女と連絡してたかなんかだったらしいよ」

「“最低”だね。何でベッキー“みたいな”娘が“あんな”男に引っ掛かっ“ちゃった”

んだろう」

　それは、一見ベッキーの味方をしているように見えながら、その男を非難し馬鹿にする

ことでベッキーを愚弄している気がした。

その男の何を知っているのかゲスキワを最低な男と決めつけ、ゲスキワの魅力が何処

にあるのか。と馬鹿にすることで、その男と関係（肉体だけのことじゃないよ）を結んだ

ベッキーを切り捨てているように思えた。

　ゲスキワの何を何処まで知っているのか？と思う。

人の本当の価値は見た目でも肩書でもない。し、人は価値云々で好きになるのではない。

　何処を好きになったのか。ってよく言うけど、何処が好きになった。てのは後付けら

しいぜ。

　人が誰かを好きになる時、自分に都合が良いことで好きになるのは計算と打算でそれは

本当の恋じゃない。らしい。都合が良くてもいいんだけど、それが決定打じゃない。

　恋つうのは“するもんじゃなくて、落ちるもの”

これはしちゃいけない、やってはいけないことなんだ。と理性や頭では分かっていても

歯止めが利かずズルズルとアリ地獄の砂に足を滑らせていく。

　それは、罪の意識と不安、懺悔しながら足下から崩れて行く快感に計算常識の目を閉

じる。

　あ〜、それが恋、恋、恋〜。

　大分前のことだが、ある男の奥さんが別の男と逃げた。

彼女は小学生の子供二人を連れて、夫と二人で作った会社を後に出て行った。

　会社は順調で子供たちも手が掛からなくなって、他所から見たら何の遜色もない家族に

見えた。

　奥さんが家から出るという話を奥さんから聞いた時、なんとか家に留まるようにと

心を込めて話した。

　奥さんは、ニコニコと穏やかにワシの話を聞いた後「ありがとうね」と静かに言った。

腹が決まった人は、弁解も言い訳もしないんだな。とワシは思った。

　奥さんが出て行ったことを知った人達が、言ったセリフが、

「あ〜、あの旦那じゃ、奥さん出てくよ。面白くないもん」

「奥さんって大人しそうな顔して意外とやり手だったんだね」

「あの旦那、意外と細かくてウルサイんだってよ」

「うわー、やだぁ」

「そう言えば大人しい感じだけど、何だか気持ち悪いもんね」

「大体が、あの旦那の何処が良くて一緒になったんだろうね」

「そうだよね」

　それを聞いて、思わず言った。

「どこの家庭も似たり寄ったりなんじゃないの。

みてみぃ、あんたんとこだって、どっちかが出て行ったら今言ったことと同じこと

言われると思うよ。

取り敢えず、何とか形を保っているから周りは攻撃してこないけど、ちょっと壊れてみぃ

絶対『あ〜、やっぱりね』って知ったか振りして、身内だって分からないこと話し出すよ。

大体が、何処の夫婦だってよくこんな人と暮らしてるなって“思わない夫婦”が居る？

アタシんちだって、夫が出て行ったら『あ〜、あの奥さんじゃなー、無理ねえよ』だし

アタシが出て行ったら『やっぱり、そうだよねよく我慢してたよね』ってことになると

思うよ」

ワシが思うに、不幸の構造は、そういう知ったか振りで上から目線の性格にある。

本当のことは誰にも分からない（と、ワシは思う）当の本人だって自分の中に隠れている

感情や気持ちは分かっていないという事を分かっていない。

　テレビのゴシップ。知ったか振り、思い込み、決めつけ、上から目線、恥知らず。

そこから何を学ぶかは、人それぞれ。

　他人の身になって考えることを、親身になって考える。という。

ワシは親身になって考えることが出来ているだろうか。

　こうして噂話をする人を否定している時、その噂話をしている人の裏側にある事情も

気持ちも分かっちゃいないし分かろうとも思っていない。

　つうことは、ワシも同じということか。

　ワシは、何が書きたいんじゃ。

自分がされて最高に嫌だったのが知ったか振り、勝手な評価や決めつけだった。

　だけど、それをしないでくれと書く時、その嫌なものと同じトーンになるのは何故な

んだろう。

　ワシが本当に書きたいことの為には、表面で語っているように見える人の裏の気持ち

にも思いを馳せる努力をする、難しいけどそれが次に進む道かもしれない。

　と、思った。

　因みに脳科学で、浮気性の男はモテルことに決まっている。という。

人間も動物。種の保存の欲求、自分の遺伝子を出来るだけ後世に残したい。

　男は、遺伝子レベルで浮気して自分の子供を作りたい。

女は、浮気性の遺伝子を持つ男の子供を持つことで自分の子孫を繁栄させよう。とする。

　女ってやつは気が長いね。

そして、悪いヤツ（浮気性の男）程よくモテル。という図式が出来上がるんだねぇ。

　あ〜、ワシ、ゲスキワとセカオワの区別が付かないことがあるんだけど、どっちも

キライじゃないんだよね。