不法投棄

 朝のテレビで、高知の山間に不法投棄されたという現場が映し出された。

そのゴミの量が霞ヶ関ビルの八文目だったかな、その位のゴミが埋まっているんだそうな。

 なんと、投棄されたモノの中には個人情報がそのまま入っていたりして、これを悪用す

る者が出たらどうする気なんだか。

それにゴミの出所からどこの会社が請け負って処理業務したのか丸判りなんですけどー。

バッカじゃなかろか。

そこに雨が降ると悪臭の水が染み出し、その水の周りの木は立ち枯れている様子が

映っていた。

サイテー!と、朝っぱらから腹を立てていたら台風の大風で家の前の道路にゴミが飛ぶ。

ご苦労さんにも外に飛び出し、ゴミを拾う。

それでなくても雨風が強くて運転が危ないのに、ゴミなんか飛んできたんじゃ危なくて

トンでもないって、トンでますからー。

ゴミを拾っていたら、立川さんに会う。

“躾”に出ていた「喧嘩せずに、旦那にゴミの分別を教えることが出来る能力を持つ」

あの彼女だ。

「どうしたんですかー?」

「ゴミが飛んでて危ないから、拾ってるの」

「あらー、偉いですねー」と誉められてちょっといい気分。

「でもねぇ、ウチの方ってイナカでしょ。

こんな雨風が強い時はゴミが飛んでいくからいい、

大水の出た川で水に流しちゃえばいいっていう人がいるんですよ」と立川さんが、言った。

「あー、そういう人私も知ってる」

そうそう、

 ある所でオイルだか、石油だかを排水溝に流し、それに引火して火事になった。

たまたま間違って流してしまったと言っていたが、実はずっと流し捨てていたらしい。

 使用済みの油を排水溝に捨てる人は案外多い。

それは、一般家庭だけではない。

 

 ふと思い出す風景がある。

晩秋のある日、夕刻に車を走らせていた。

真直ぐに続く道路の横は、黒ぐろとした畑が広がり、遠くに見える林には夕焼けが宝石の

ように散りばめられていた。

老夫婦が枯れ草を燃しているらしい煙が、空に上っていく。

 あー、日本の風景だなー。と思いながらその横を走り抜けた。

その時、ひんやりした空気を入れていた窓から、異様な臭いが入ってきた。

 二人は、刈り取った草と一緒に、畑に使った黒いビニールを燃していたのだ。

 

 戦争の辛さと大変さを体験した人は(そういう人ばかりではないが)ゴミを川に流すこ

とは、そう大したことではなかったりする。

 油をどう処理したら良いかを知らない。知っていても面倒臭い。

だから、子供に教えられない。

自分達が物品で苦労したから、自分の子供には不自由をさせたくないと頑張り、与えた。

 そして、モノに対しての感謝もなければ、礼儀も知らない日本人が出来上がった。

その一人が、私。

 家じゅうにモノが溢れ、それでも欲しいとなったら簡単に買う。

冷蔵庫には食べ物をいっぱいに詰め込み、賞味期限が切れては、惜しげもなく捨てる。

整理整頓が下手で、箪笥の中には着ない洋服が溢れかえり、

入りきれないモノがサンルームに追い出され、日に焼けて色が変わり、ゴミとなる。

かろうじてゴミの分別と資源ごみの回収、生ゴミを畑に入れて土に戻すことは行っている。

 そういう私が育てた子供が、今大人になった。

 

日本の象徴とされる富士山が、世界遺産に登録されなかったのは、あまりにもゴミが

多く汚いからだと聞いた。

 ナルホド、富士山は日本の象徴だ。