インフームドコンセント1

 

 先日、家の前に居たら何だかのテレビ局だという人が声を掛けてきた。

原発についてインタビューしたいという。

 ナニ!原発についてとな!

喋りたいことが山ほどある。

 でも、自分の立場上テレビで放映されては困る。

で、忙しそうなその人に迷惑だろうと思いながら語ってテレビインタビューは断った。

 その話をすると、

「モザイクで声を変えてもらってインタビューに答えればよかったのに」

と言った後で、

「あー、でも声を変えても顔が見えなくても、ゼッタイあなただって分かっちゃうね」と、

みんなが言った。(ワシのエネルギー、オーラは半端ないらしい)

 

 娘美樹にその話をした。

「そーなんだぁ、それでお母さんはどういうことを話したいの?」

「そうだな、先ずは原発のインフォームドコンセントをするのが大本の基本だってことを

言いたい。

インフォームドコンセントって、知ってっか?」

「聞いたことあるけど、何だっけ」

「それは病院なんかで病状とか治療法をちゃんと説明することで、例えば癌だとして

あなたは何処の癌で進行と転移はこのようになっていて、治療法として他にもあるかも

しれませんがコレとかコレとかコレがあります。

そして、コレをした場合その回復率はこの位で、副作用などのリスクはこのようになりま

す。って説明することさ」

「へぇー」

「それを説明して現実を知ることによって癌になっている本人が

『じゃ、私はこのような治療をしたいです』って、しないという選択も含めて選ぶわけ」

「なるほどね」

「その他にセカンドオピニヨンっつって違う医師の見解と方法を聞くってのもあるんだ」

「へぇー、何だか民主主義で公平な感じだね」

「だよね。

オカァは、何事もこれが基本だと思っているわけ。

原発っていうのがどういうことで、今、原発がどういう状態になっているのか。

それを先ずは知らなければ、賛成も反対も、感覚とか感情だけで言うのは危険だと思う

んだ」

「そうだよね」

「だっぺ?」

「じゃあ、オカアは先ずは原発について語りたいの?」

「そーゆーこと」

「どういうことを語りたいの?」

「例えば、あんたマークI(ワン)って知ってっか?」

「何?それ」

「マークIっていうのは最初に日本で使われて今も使われているアメリカから買った

原子炉の名前で、今回福島で爆発したのがマークIなんだ」

「ふーん」

「それがな、30年前に欠陥があるって指摘されてアメリカも認めたのな、それなのに

改善改良されることがなくて、そのまんま使われてきてたんだぞ」

「いいの?そんなことで」

「いいわけあっかよ。どう考えたってダメに決まってべ。

どういうもんだって、欠陥商品は、返品か、交換か、修理するのが当たり前だっぺよ」

「それなのに何で直さなかったの?」

「何でアメリカに直させなかったか…。

そこはオカアも分かんないんだけど、直せないんだっていうウワサもある」

「怖いね」

「その上、耐久年数は30年だっていうのにそれが過ぎても使われてきてたんだぞ」

「怖い!」

「そこにきての3,11の人災さ」

「最悪だね」

「あー、オカアは事実だけを淡々と話したいと思ってるんだけど、出来ないな」

「いいよ。そのまま話して、分かりやすいよ」

「そーかぁ。じゃ、このまま続けちゃうか。

つっても、もうここから先は分かりやすく話せないな」

「そこを分かりやすく面白くしてよ」

「出来ねぇ(きっぱり)だから覚悟して聞けよ」

「いやだなぁ」

「そもそも、原子力発電ちゃ何か?

オカアが知ってるのは、簡単に言ったら濃縮ウラン(天然ウランの“ウラン235”

それはウランの“ウラン238”99,3パーセント以外の0、7パーセントのモノで

それを3〜5パーセントまで濃縮したもの)を使う。

それに中性子をぶつけて核分裂を起こさせるんだけど、そいつは、

水力、火力などの比ではないごく微量、わずかの量でものすごい力、エネルギーを出す。

 でーもなぁ、それはぶつけた瞬間から熱を発し続け、放射能を半永久的に出し続ける

モノ(怪物)となるんだな」

「何だか怖いね」

「うん、怖い。ちょっとしたミスで制御不可能になるなもんなんだぞ。

でも、あんたが生まれる前の頃にオイルショックっていうのがあって、高度経済成長が

進んできた所だったもんで、その勢いを止めたくなくて石油がなくなるんなら核に行くべ

ってことになっちゃったんだ」

「誰がそう言いだしたの?」

「先ずは、戦後に東海村に原子炉を作るって走り回った白洲次郎が最初。

それをマスコミが持ちあげたつう話だな」

「その人が居なかったら原発は出来なくて事故は起きなかった?」

「さー、どうかな。白洲がやらなくても誰かがやったかもな。

で、東海原発が出来て、それから20年位してオイルショックがあって中曽根総理が

アメリカに行って原子力発電所を見学して『これからの日本はこれだー』ってなる。

核燃料で日本をもっと豊かにしようってことにな」

「豊かでないとダメなのかな?」

「なぁ、そう思うよな。

でも普通の人じゃなくて上に居ると思い込んでる人ってのは、現状に満足しないことが

向上心だと思ってて、静かな満足や安心より世界に日本がどう見られてるかの方が大事

だったりすんだ」

「そういう人って居るよね」

「うん、子供が何か失敗すると『家の名前に泥を塗らないでくれ』なんつっちゃってな。

子供の気持ちより人目の方を気にしちゃったりすんだ。

本当に何が大事か分からねえんだ。

あっ!一句思い出した。誰だかが『落とし穴は、上にある』って、落とし穴ちゅうのは

下ばっかじゃなくて、思いがけないトコにあるんだって。

偉い、立派、権威、有名なんてのは、危険な香りがすんな」

「それで原発はどうなっていくの?」

「あー、そうそう。

それでバンバン原発が作られていくんだ。それも地震の活断層の上にな」

「何で?」

「原発っていうのは海のそばじゃないとダメで、日本は地震国だけど太平洋側も日本海側

も活断層が、それも一つや二つじゃなく走ってるからその上に作ることになっちゃうんだ」

「地震の活断層があるってことは分からなかったの?」

「それを言ってきた学者は居た。

でも、それを言うのは第一線じゃない人ばかり、つうかそういうことを言う学者は干され

てきたんだ。この話すっか?話すと長いぞ」

「いやいいよ、それより、何で海のそばじゃないとダメなの?」

「さっきも言ったべ。

核分裂つうのは、ものスゴイ少ない量で、ものスゴイエネルギー熱を出すんだ。

それを利用してタービンを回して電気を作るんだけど、1回それにスイッチを入れたら

もう止められない。

人間がもうこの位でいいよ。って言ったってどんどん熱は上がって行く。

電気を作ろうが作るまいが、止まることなく上がって行くんだ」

「何だか怖い」

「あー、おっかねえ(怖い)ぞ。

だもんで、熱を利用して電気を作る半面、熱を下げなくちゃなんねえんだ」

「大変だね」

「うん、暴れ馬に働かせているようなもんだな。それも、殺しても死なない暴れ馬。

そんでもって、半端なく上がる熱を、今度は下げる為に海の水を引っ張って来て循環させ

て冷やす。ってことをするんだ」

「海は大丈夫なの?」

「アカンことが起きたという話は幾つかつうか、いっぱい聞いているけど、計画上は

大丈夫ってことになってる」

「計画より事実の方が大事じゃないの?」

「だよな。でも、計画の為には事実は握りつぶされることになる。

それに、温暖化防止にも原発がいいって言われてきたけど、それをやってると海水の温度

がドンドコ上がっちゃうんだってさ」

「ダメじゃん」

 

  という所で、話が長くなるので、今日はここまでとします。

話は、続く。