小刀
知人と、農作業をしていたら3歳になる孫が現れた。
嫁であるママもその後についていた。
孫は、知人の横にある木箱に乗りたがった。
「乗りたければ、自分でガンバリな」と知人は言った。
「危ないからダメよ」とママは言った。
しかし、孫は、止めるママを振り切って木箱につかまり、よじ登ろうと始めた。
短い足を空中にバタつかせながら、必死になっている。
「あー、バアチャンは出来ねえと思うな」と知人は言ったが、
孫がその横にある小枝の束に足を掛け、足掛かりに手ごたえを感じたと思えたその瞬間、
知人の長靴が、孫の尻をチョイと支えた。
孫は前につんのめりながら木箱の上に腹這いになった。
それから、しっかりと手をついて木箱の上に立ち上がった。
そして、「ほーら、出来ただろー」と言った孫の顔は、誇らしげだった。
その後で、知人は嫁に
「お母さん、あんなことしないで下さい。
一度やらせると見てないところでもやるようになりますから」と言われた。
嫁は、自分の目が届かないところに勝手に行ってしまっては危険だからと、孫が畑で
遊ぶことに好意的にでないようだ。
私は思うんだが、昔の子供は小刀で鉛筆を研いだ。
いいとこのお坊ちゃんやお嬢さんは、危ないからと小さい頃からは小刀を持たせない。
そういう過保護にされている子供は、何でも自分でやっていないから批評家で知った風
な口をきいた。
そして、やってきていないのに、時期がくると自分は出来るつもりで包丁を持つ。
そして、大怪我をした。
何でも経験して、小さな怪我を沢山した子供は、大きな怪我をしない。
経験は、何よりの勉強で宝だと私は思う。
子供の成長を願い、その成長する姿を見たいと思うのは当然の親心だ。
しかし、子供は親の目の届かないところで成長する。
余談
学校の勉強で、本の題名とその作家名を覚える。
ありゃあ、何の肥やしになるのかね。
ああいうことを覚えるだけで、実際に読んで、感じて、考えないから、知ったかぶりの
バカが増えるんじゃないのかなぁ。
まあ一回くらい読んだからといって、見切ったつもりで語るヤツってのも気持ち悪いけ
どね。
最近、知ったかぶりの偉そうなヤツが多い気がして、気分悪いっすよ。
えっ? オマエもだって? こりゃまった、失礼。