マシュマロテストと可塑性

 

1960年代に、スタンフォード大学で職員の子供たちの通っている幼稚園で

4歳児、186人を対象にある実験が行われた。

そこには、ウォルター・ミシェル博士自身の子供(娘)も含まれていた。

 

その実験とは、何もない部屋の机の上にマシュマロが一つ置かれ「15分食べずに待て

たらもう一つあげるよ」と、先生が部屋から出て行く。

そこで、どれだけの子が我慢をするか、我慢が出来るかという実験だった。

 

我慢出来た子には、時計を見る、自分の髪を引っ張る、マシュマロを見ないようにする

など食べたい気を紛らわす、気を逸らそうとする行為が見られた。

我慢出来なかった子は、マシュマロの前から離れずじっと見ているような執着心が

見られた。

待つことが出来て、2つ目をゲット出来た子は、3分の1だった。

 

その後、ミッシェルの娘は成長していく。

実験のその後に興味を持った博士は

「あの時の〜(我慢できなかった子)はどうなっている?」

「あの時の、(我慢していた子)〜は今何をやってる?」と度々娘に聞いた。

すると、我慢をしていた我慢できた子のその後は、性格や行動に大きな問題がなく

スポーツや音楽に興味を持ち成績も順調な子が殆どだということが分かってくる。

そして、我慢できなかった子には、家庭的な問題があり、勉強についていけなかったり、

友人、人間関係に問題が起きていることが分かってくる。

 我慢と忍耐の弱い子に、より我慢と忍耐が与えられる。

 

そして、1970年から保育園で5500人を対象に60年の実験と追跡調査が行わ

れることになる。

その結果、

 <我慢できた子>

学校の成績が良い、人年関係に目だった問題がない、希望の学校に進んでいる、麻薬に

手を染めていない、肥満度数低い、結婚順調、離婚少ない。客観的に見て人生充実。

 <我慢出来なかった子>

成績の劣り、人間関係の問題、中退、麻薬、肥満度数高い、未婚妊娠、離婚が目立つ。

感情に忠実。

 

1988年の追跡調査では、IQより自制心の強さが将来のSAТ(大学進学適性試験)

に大きく関わってくるとし、そのトータルポイントが我慢出来た子の方が120ポイント

高かった。

 

 我慢(自制心)が出来る子と出来ない子の違いは何か?

3歳の時はどうだったか、2歳の時はどうだったか、と調べて行くと我慢出来る子は

その時期に、親に愛されているという事が分かって来る。

 

 ここまでで話を終わりにしてしまうと、私が最も嫌だと思う決めつけが始まる。

「そうよ、だから親って大事なのよ」そんなの分かってらい!

でも、子は親を環境を自分で選べないんじゃ!

「育ちが悪い、親に愛されなかった子って何するか分からないから恐いわ」そう決めつ

けるオメーが恐いわ! そう言うあんたは、さぞかし育ちがいいんでしょうね。

 何をいきり立っているんだか、ワシのムカドンがムクムクと起き出す。

 

大人を、周りを信頼出来ない環境で育ったら、信じて待つ事は死活問題になる。

テストの際にも幼稚園教諭と子供の信頼関係が出来ているかどうかが、大事な条件だと

いう。

 

ここで、朗報がある。

人間には、脳やシナプスの可塑性(かそせい)というのがある。

可塑性とは、個体に外力を加え変形させると、力を取り去っても元には戻らない性質

塑性と、辞書にある。反対語、弾性、元の形に戻る性質。

しかし、脳やシナプスの可塑性となると、様々な入力に対して変化していく能力のこと。

となる。

コンピュータは、どんなに使われようと回路の連結が変化することはない。らしい。

が、人間の脳や神経細胞は、育つ過程、或いは十分に熟した後でも、この神経細胞は変化

する。というのだ。(ヒャッホー)

変化する要因は、脳や神経細胞、シナプスへの入力。

脳の入力とは、イコール、ヒト個体への刺激(感覚入力、視覚、聴覚、味覚、触覚、痛覚)

として脳(シナプス)に伝えられる。

入力は、そういった受動的環境だけでなく、

個体的(運動、行動、思考、感情など)脳内活動によってももたらされる。

可塑性によってもたらされる神経回路は、シナプスの(生じる、増加、減少、消滅)

などの結合変化を起こす。のだという(イイネ)

 

以前、住井すゑさんが講演(30年位前かな)で

「人は必要があれば、その気になれば、幾つになっても樹状突起シナプスは再生する!」

と言っていたのを思い出す。

 当時は、シナプスは6歳で決まる。だから、6歳で人の力量は大方分かる。みたいな

風潮があった。

私は、それがナンボニモ嫌だった。

年だからダメだだの、親がダメだから自分もダメだ。なんていう言い訳は聞きたくない。

「自分は変われない」と言う人に「あなたは本当に変わる気がありますか?」と聞き

たい。

栴檀(せんだん)は双葉より芳(かんば)し。ってのは、実際あるかもしれないけど、

生まれ持っての能力才能とか、勝手に与えられた環境で人の人生を私は決めたくない。

自分を見限って決めつけて、それでいい。ってんなら、ご自由にどうぞ。だが、

人間ってのは、良くも悪くも誤作動を起こす生きものなんじゃないだろうか。

 親鸞聖人は、「人は間違う生きものだ」とおっしゃっている。

そして、「間違うからこそ、成長するんだ」とおっしゃった。

 パンドラの箱を開けた人間。パンドラから現れる苦難、その底からは、希望の妖精が

現れる。

全ての人間は、パンドラの箱を持っている。

 

因みに、出産の時に一瞬で脳が変化する人がいる。らしい。

育児で人が変わる人がいる。

事故で、病気で、ウツで、信じられないような体験、経験をして人生が変わった。と

いう話を聞く。これは“受動的要因”だな。

 

 4歳までの育ちがなんだ!と私は思う。

それまで与えられたものをバネとして、自分の運動、行動、思考、感情という個体的

脳内活動“能動的要因”によって脳は変化し、人生は作られる。

親に愛されなかった辛さや、恵まれない淋しい想いを、疑いや不安でなく、人を思い

やる気持ちへと育てたら、悲しみは宝石へと変わる。

 

今、80代になるというミシェル博士、マシュマロテストを受けた子供達に、

今、何を思いますか?

ね。