メダカ

 

 現在の私はといえば、室内犬を飼い身体の一部のように寝起きを共にし、メダカの繁殖

を楽しんでいる。

メダカは、12年飼い続けている。

今年、ヒメダカに加え、シロメダカとクロメダカを手に入れた。

メダカの卵は、親と別の容器に移さないと親メダカが食べてしまう。

体調を崩した後は、6匹にまで減ったメダカから500匹の子が孵った時は嬉しかった。

 メダカは、水温の上がった初夏の頃から毎日のように卵を産み始める。

そうなったら私の出番だ。

メダカの水槽が置いてある山小屋のベランダで、風に吹かれ、太陽の陽に首筋を焼かれ

遠くに見える山並みの稜線を眺め、時々寝ころがって空を見る。

 あー、肝心なことは、水草に付いたメダカの卵を採って別の容器に移す。

親メダカは動いているものは餌だと思って、卵から孵った子を食べてしまうからだ。

 気が向いたら水槽を洗い、新しい日向水にメダカを移す。

メダカは上から見るための水槽と、横から見るための水槽、それに産まれた順に違う容器

に入れるため多い時で20位の容器が並ぶ。

 たまり水に涌くボウフラを採って与えることもある。

これは、メダカの最大のご馳走で奪い合って食べる。

段々に割り箸でつまんだボウフラを食べるようになり、やつらは夢中になっていると

頭を撫でられても気が付かないということが分かった。

つまり危機感より食欲のほうが勝るということか。

一匹が口にくわえたモノをデープキスでもするかのように、奪うやつもいる。

私が面倒を見ない卵を産まない長い時期の後は、メダカは隠れていて出てこないが、

餌をやり卵採りに精を出し始めると、私の足音だけで水面に浮き上がってくる。

この頃は、オーンの呼び声で現れるようになった。

水槽に向かって「オーン」と唱えている私を、知らない人が見たら怖いかもしれない。

 

今年の春、一番長生きだった水蓮鉢のメダカが死んでいた。

私が、息も絶え絶えだったときに毎日眺めたメダカだった。

 何もいない蓮の鉢だけが入った水練鉢、黒い藻が沈み水は透き通っていた。

夏の風が吹いた日、そこに小さなモノが動いているのが見えた。

 メダカの子だった。光る糸くずのような命だった。

なな、なんと、そいつが夏の終わり頃には卵を産み出した。

 だーから、生きものは面白くってやめられないんだよなー。