見えないモノ

 

 メダカ広場で遊んでいたら、耳元で「バチッ!バチッ!」っという音がした。

電気がショートしたかのような乾いた強い音だった。

振り向くとトンボが二匹、水色の塩辛トンボと黄色い麦わらトンボが、ぶつかり合い

ながら飛んでいた。

激しくぶつかっては、麦わらトンボがメダカの水槽に卵を産んでいる。

トンボの幼虫ヤゴは、メダカの天敵であるが、トンボの種類によって色形が違う。

 神様トンボのヤゴは親に似て細く、オニヤンマのヤゴはごりっと太い。

意外と知られていないが、麦わらトンボと塩辛トンボは同じ仲間である。

麦わらトンボはメスで、塩辛トンボはオスと決まっていて、その二匹が夫婦となって

卵を受精し、水に産み落とす。

そして、その子供であるヤゴは、子供の時から麦わら色と塩辛色でオスメスが一目瞭然

で分かる。

今、まさにバチバチの授精劇が私の頭の上で行われていて、その直後に麦わらトンボが

お尻を水に付けて産卵している。

 スッゲーなぁ。と、暫らくそれを鑑賞する。

産卵が済んだのか、麦わらトンボは何処かへ居なくなったが、塩辛トンボはそこに残った。

以前に見た時もそうだったが、塩辛トンボは産卵が済んでも見張っているかのように

そこに残る。

産卵した疲れなのか、卵への愛着なのか、はたまた違うメスが来たらもう一発子作りを

するつもりなのか、その真意は分からないが、近くの物入れにとまって動かない。

 

 このメダカ広場では、私流のシャベリが止まらない。

カエルが鳴いていると、

「きゃー、恐い」とおっしゃる御仁が居られる。

「何で?」

「だって、気持ち悪いでしょ」

「ふーん」(向こうから見たら、あんたが気持ち悪いよ)

「あの鳴いてるカエルは、お父さんなんだな」

「何で分かるんですか?」

「カエルの場合、鳴くのはオスだけと決まってるんだな」

「えっ、そうなんですか?」

「そう、時期がきたらオスが鳴いて、それにメスが集まって来て、子作りをして卵を産む」

「へえー、初めて聞きました」

「そうなんだ。セミもオスだけが鳴いてメスはそこにやって来て産卵するんだよ」

 私は、この“〜なんだよ”という言い方が嫌いなのだが、つい分かった振りの話し方に

なる。

「つまり、カエルの声にしても、セミの声にしても、聞こえてる声と同じ数のメスが

その後ろには居るってことなんだな」

「スゴイですね」

「うん、スゴイよね。私は、セミやカエルの声を聞くと、この世も同じで見えてるモノや

聞こえてるモノは、ほんの一部、氷山の一角で、自分の知らない分からないことで満ち満

ちているんだ。ってワクワクするんだ」

「何時もそんなこと考えているんですか?」

「うん、まあね。

ちょっと、見てよ。カエルが居たよ」

「ヤメテ下さい」

「何にもしやしねえよ。

いいから、ちょっと見てみなよ。

これ、ニホンアオガエルっていうんだけど、保護色なのね。だから、見て、ホント?は

キレイな緑色なのに黒いバケツにくっついていたから、こんなに黒くなってるんだよ。

そんでもって、白い物の所に居ると、白くなるんだよ。面白くない?」

「ええ」

「日本黒メダカも保護色で、こっちの黒いトコに居るやつは真っ黒でしょ、こっちの白い

トコに居るのはグレーで違う種類みたいに見えない?」

「そうですね」

「みんな身を隠す術を知ってる忍者だよね。ところで、知ってるカメレオンって周りに

合わせて色を変えてる訳じゃなくて、気分で適当に変わっちゃうんだっけかな。残念な

動物に書いてあったけど、確かじゃないから興味があったら調べて」

「はぁ」

 

「ここに、サンショウウオがいるんだよ」と、トウキョウサンショウウオを紹介するのは、

その話をしたら喜びそうな人だけ。

こいつには糸ミミズをやるのだが、近くに売っている所がないので今はオタマジャクシ

をやったり、土の中のミミズをやったりしている。

どうも、エサに不足すると共食いをするらしいのだ。

今、三日月型のゼリー状の中にあった卵から産まれて2カ月近くになり5センチ足らずだ。

首の周りにピラピラがあって、ウ―パールーパーに似ている。このピラピラは後一カ月

程で無くなり、そうなると水中から出て湿った草や落ち葉に下で暮らすようになる。ら

しい。

ウ―パールーパーのピラピラも成長すると無くなるらしく、ヨダレ掛けみたいだと思う。

今は、水から出たらどうやって飼うかが思案のしどころで、毎日考えている。

田螺(たにし)とニセタニシは別物で、ニセタニシはゼリー状の卵で爆発的に増えるが

田螺はカタツムリと同じで、雌雄同体で二匹いると夫婦になり、殻の中で卵を孵し形に

なって出て来る。

「田螺は、昔食べたんだよ」と言うと、

「え〜、気持ち悪い」と言う人に、

「え、エスカルゴ食べたことないの?」

「フランス料理は、食べてます」

「じゃ、同じだよ。カタカナだと高級な気がしてるだけで、変わらず美味しいらしいよ。

昔の日本人は田螺で餓えから助けられたって聞くけど、何かドロ抜きとかちゃんとした

やり方があるんだろうけど、食べてみたいな」と言うと、

「あ、私食べた事あります。美味しかったですよ」と言う人が居た。

タイリクバラタナゴは、別名ビンタで、鮒科で九州の方では佃煮にして食べるらしい。

私は幼い頃、鮒の佃煮を食べたが美味しかった。

何故、ビンタというかというと、ビンタをはられたみたいに縦にペッチャンコだから

だと聞いた。

 川エビは今、お腹にイッパイ卵を付けていてそこで子が孵って育って行く。

去年、水が腐ってひん死の状態だったドジョウを保護してきたが、今元気に泳いでいる。

ヨシノボリが、ドロの底を這っている。

日本ザリガニは、茶色くて小ぶりだ。

 

 メダカを飼って26年、メダカの種類は25種類。