ミツコ ブライアン

 4月24日、ミツコがワシントンから遊びに来た。

ミツコと知り合ったのは、20年前、私が32歳の時だった。

 私が商売の店に入って3年目で、夜逃げ寸前状態からようやく脱したところだった。

横浜の問屋に行く為に乗ったロマンスカーの隣の席に座ったのが、3歳になる子供を連れ

たミチコだった。

 明らかに外人の血が入ったおでこの広い、目のクリクリした可愛い子供だった。

私は、隣の席に子供を抱いて窮屈そうにしている彼女に向かって

「子供を真ん中に座らせましょうよ」と声を掛けたという。

 それから、親しく話すことになった。

「ところで、あなた、何の仕事してるの?」

自分のことを散々語った後、私は、唐突に彼女に聞いたという。

「健康食品のグリーンを販売している」と答えた彼女に、私は

「それ幾ら?」と聞いたという。

「一番小さいセットで1万円」だと彼女が答えると

「じゃ、これでソレ送って」と何のためらいもなく1万円を渡したという。

 

何という人だろうと彼女は思ったという。

彼女とは20年の付き合いになるが、何回その話をされたことか。

 そして、それを言われると私は、

「でも、私、誰にも騙されたり失礼な真似されたりしたことがないのよ。

大体が、失礼な生き方している人はニオイで、っていっても物理的なニオイじゃなくて

何だか嫌なニオイを感じるのよ。

だから、そういう人とは、関わりを持たないようにしてるのよ」と、毎回答えてきた。

 

 ミツコには、何か引かれるものがあった。

子供が外人だからだけじゃなかった、何か面白い暖かい、興味をそそられる何かがあった。

ミツコは、若い頃スチュワーデスで世界じゅうを飛び回っていたらしいが、アメリカ人

と結婚して日本のアメリカ基地に住み、現在はワシントンに暮らしている。

 今回は、故郷で同窓会があるということで、京都、熊本、千葉、神奈川、を飛び回り

そして、私の所へ来た。

 乗り物嫌い、特に飛行機嫌いの私なのだが、行きたいと思ったら何処にでも行く。

バリ、パリ、ミラノ、ミュンヘン、ニュージーランド、ハワイ、香港、台湾、シンガポー

ル、だから、私が出不精だということ言っても信用されない。

でも、行かなくてはならない状態になり行く羽目になるから行くといった感じで、その

後はぐったりしてしまう。期間もせいぜい2週間が限度だ。

それを彼女は、2ヶ月近くも飛び回っている

 今朝、ミツコからメールが入っていた。

「今、ニューヨークの娘の所に寄っています。ワシントンへの飛行機がイッパイで途中

寄り道」だそうだ。

モー、スゴイー、尊敬―!だ。

 

 ミツコが来る前日、私は神保町の古本屋を歩いていた。

ミツコがパソコンにメールを入れていたが、見ていなかった。

 前々から、遊びに来て!と言っていながら、私はちょっと忘れていた。

失礼千万、あきれけえったヤツだ!

 そういうヤツなんだよ私って、でも、ミツコに会いたいのも自分の住んでいる所を見せ

たいという気持ちにも並々ならぬものがあった。

 なら、忘れてんじゃねーよ!って感じだよなぁ。

私は大好きだったり大事なものを忘れる癖がある。

 そして、期待していない時にポロリと顔を出すのがこたえられない。

 

 ミツコとの逢瀬は、楽しかった。

出来れば、もっとゆっくりした一緒の時間を過ごしたかったが、4時間という限られた

時間で、言葉のない空間を持つことは不可能だった。

 

 今日の天候は、五月晴れの快晴です。

一緒に歩いて行った“森の中のレストラン”

ワイン、白も赤も、美味しかったですね。

山小屋から見える空には、ヒバリが鳴きながら昇っています。

田んぼに耕運機が入り、土は柔らかく耕され水を張られるのを待っています。

田植えは遅い方は、お米が美味しいんだそうですね。

だから、田植えは連休の最後かその後になりそうです。

ツバメが、飛んでいます。

高い所を飛んでいるので、天気は崩れないでしょう。

 そろそろ、蛙の声が夕暮れを包むことになるでしょう。

 

♪カエルの唄が、聞こえてくるよ、グァ、グァ、グァ、グァ、ゲゲゲゲゲゲゲゲ、

グァグァグァ♪