モンシロチョウ

 

我が家の二階にある台所はミチコさんの家の方を向いている。

ミチコさんにそれを言うと嫌がるので言わないようにしているが、なもんで、

ミチコさんの家と、その前に続く畑がよく見える。

 ミチコさんは、働き者だ。早起きで、朝4時5時にはもう畑をウロウロしていたり

その中に屈(かが)んで何かしている姿が見える。

 去年、“夏野菜”を書いたがそこで出てきた信頼出来る野菜を作っているのが、

ミチコさんだ。

 

つい先日、緑に覆われた畑の間に、白い虫取り網を持ったミチコさんが居た。

畑の中で白くヒラヒラと飛んでいるモンシロチョウを、ミチコさんが採っていた。

天気の良い日で、空の青と、畑の緑、飛んでる白い蝶が居る。

そこに白い虫取り網を持ったミチコさんの姿は、思わず笑い出したくなるようなステキ

な光景だった。

 ハッハーン、小学生か4歳になる孫のどちらかに頼まれてモンシロチョウを採って

いるんだな。と、私は思った。

 その何日か前も4歳の孫と二人で虫取り網を振り回している姿を見たばかりだった。

黙っていようと思っていたのだが、つい嬉しくなって、

「ミチコさんっていいねぇ。一人で虫取りしてたでしょ」と言ってしまった。

「あら、イヤだわ。見てたの?」

「へっへ、ミチコさん少女のようだったよ。マゴッチにでも採ってあげてたの?」

「そんなんじゃないのよ。あの可愛いモンシロチョウが悪さをするのよ」

「え、何を?」

「卵を産みつけに来てるのよ。放っておいたらキャベツなんか食べる所がなくなちゃう

のよ」

「あー、そうかぁ」と、私は納得した。

農業は無農薬では不可能だと聞いたことがある。

そして、なるべく薬を使わないようにしたら虫との戦いになるという。

 マゴッチと一緒にモンシロチョウ採りをしているように見えた時も、ミチコさんは

孫に見えない所で蝶を殺していたんだそうだ。

 

 この間、“今晩泊めてください”っていうテレビを観た。

去年だったか地震の被害にあったヤマコシムラに出向いた女優が、一泊の宿を所望する。

そのお礼に何かお手伝いできるこがあればとしたのが、錦鯉の養殖池での

“おたまじゃくし採り“だった。

 バケツの底が見えない位に黒く採れたおたまじゃくしを見て、そこのご主人は、

「助かるよ。このおたまじゃくしは鯉の天敵なんだ。これだけいなくなれば安心だ」と

言った。

 あのおたまじゃくしは、土にでも埋められるんだろうね。

 

 排水溝に落ちた犬猫を救う映像が流れる。

方や保健所に連れていかれる犬猫が居る。

「節電しましょう、地球温暖化防止に協力しましょう」

「命は大事だ。イエスは自分を愛すように隣人を愛し、敵さえも愛しなさいと言われた」

といいながら戦争を続ける国がある。

 

 ほれ、テレビ大好き人間だから、テレビから情報を得ることがとっても多い。

日曜の午後2時8チャンネルの伊藤ひろみプロデュースのノンフィクション番組が好きで、

よく観る。

 以前に、日本の女性がタイに嫁に行き、出産してその母親と祖母がタイに会いに行く。

ってのを、やっていた。こーれには、興味深いものがあった。

 丁度雨季で、湿度と暑さ、それに掘っ立て小屋のような家で、生まれたての赤ん坊と

横になっている娘を見た母と祖母は、憐憫と軽蔑の入り混じった表情を見せた。

貧しい(物質、金銭的に)人たちの前で序所に尊大になっていく日本人。

婿が赤ん坊のオシメを洗い干している横に祖母が居た。

雨が降る中でテントのようなビニールの下で、婿はオシメを洗って干していた。

 それを横で見ていた祖母が、「しっかり絞らなかったら乾かないだろうよ!」と

オシメを取り上げ、ギュギュと絞って干した。

 婿はそれを悲しい目で見た。

言葉が通じないから説明出来ない。

 タイでは、オシメは絞ると赤ん坊の頭が痛くなるから絞らずに両手で押し付けるように

して水気をきるのだという。

 

 あーあ、私も分かっているつもりで、どれだけ誤解(誤って解釈)しているんだか。

遠くから見て、知ったかぶりして話して、どれだけ事実と違っていることがあるんだか。

 でもね。そのことを忘れなければいいんだってお坊さんが言ってたよ。

草を引く時、(すみませんねぇ、私の都合で引かせてもらいますよ)って思う気持ちを

忘れなければいいんだって。

 (これは、こうだ!)って思った時に(でも、私の知らない違う何かがあるのかも

しれない)って気持ちを持っていれば、正義が刃にならないらしいよ。

                     あー、気を付けようっと。