ねこ

 

ねこが ギャーと叫び 飛び上がった

地べたに叩きつけられた ねこ

目を宙に漂わせ

ヨダレを流しながらヨロヨロ歩く

 

毛を逆立て 壁にその身をぶち当てる

フーフーと 威嚇と恐怖の声を吐く

 

その目には 何が見えているのか

 

そいつを作り出した人間は

もうすぐ そいつに出遭うことになる

身をもって そいつを知る事になる

 

首に鈴を付けようと考えた

この世は争いだらけだ みんな心に壁を持っている

争うことを止め 心の壁を取り払ったら

自分もみんなもどんなに自由で平和になることか

そして

「戦いを止めよう 武器を手放そう」

「心の壁を取り払い 心を開こう」と呼びかけた

すると

「あなたが手放したら 私も手放します」

「あなたが開いたら 私も開きます」と答えが返ってきた

「私が捨てても 本当にあなたが捨てるかどうか分からない」

「私が開いても あなたが開かなかったら困ります」

「私も 先にそれをやって 馬鹿を見るのは嫌です」

・・・

「そうだ 123で捨てよう いっせいに開いたらいいんじゃないか?

「そうだ それがいい」ということになって

それから 声を揃えて「123 !」と言ったけれど・・・

もうお分かりでしょう

だれも周りの様子を伺うばかりいて

捨てるものも 開くものもいなかったのです

 

それから たくさんの月日が流れ

生まれ出したのです 今

武器を持たず 壁のないものが

それはおかしいと武器と壁を持つものは警戒しました

そんな筈はないと否定しました

何か企みがあるのだ きっと大それた陰謀が隠されているに違いないと

それは迫害となり それらを追い詰めはじめたのです

 

それから先はどうなるのか 分かりません

まだ始まったばかりですから

 

自分の首に鈴が付いているねこは

それの首に 鈴を付けることなど 考えもしないのです