ネパール

 この間の日曜日、1015日、駐車場の横にある庭の手入れをしていると、

知人が、ネパールから日本に来て働いているという女性を連れて来た。

彼女は18日にネパールに帰国するということで、知人が日本を離れる前に色んな所に

連れて行っては、案内しているのだという。

 知人は写真撮影と登山が趣味で、ネパールに学校を作り学用品を贈ったりする活動に

参加している。

 頑張りやの知人は酒を呑むと、普段の我慢や鬱積が噴出すのか絡み酒になってウルサク

なることがあるが、根が素直で優しい人でちょっと可愛い。

 知人の話はさておき、ネパールの彼女(メイ)は、30歳で4歳になる女の子が一人

いるということだった。

 子供は、ネパールにいる彼女の母親が面倒みている。

夫は、アラブで働いていて家族は皆離れて暮らしているが、自分は幸せだとメイは言う。

「ワタシの旦那さん、とても素敵な人なんです。

ワタシの顔はこんなだけど旦那さんはとてもハンサム。

家族の写真を見せると皆、こんなに素敵な人を離しておいたら浮気しちゃうよって言われ

るんですよ」と言うメイは丸顔で歯並びがキレイで、テレサテンに似ていると思った。

 知人の話では、彼女は何事も一所懸命行う人で、今まで勤めていた所の人たちは

「メイちゃんが居なくなったら困っちゃうよ」と本気で言っているという。

居なくなっては困る存在と人気は、彼女の努力と誠意で築き上げたものだ。

 

「何処にも旦那が浮気するとか言って、人の足を引っ張ろうとする人がいるのよね

まあ、それは旦那を誉めるための社交辞令かもしれないけどね」と私が言うと

「でも、ワタシ、旦那さん信じています。信じていれば大丈夫。心、平和」とメイ。

「そうだよね。

信じていれば大丈夫、っていうのは、旦那さんがどうあろうとも、自分は自分の生活を

しっかり生きていけるってことだよね」

「そうです。ワタシが選んだ旦那さんです。

自分を信じているから、旦那さんも信じています」

「本当に信じられていると浮気なんかしない、出来ないんだよね。

でも浮気させないために信じるってのとは、意味が違うんだよね。判る?」

「判ります」とメイは言った。

メイとは初対面で言葉も通じないところがあるが、心や気持ち、意思の疎通は言葉でも

時間でもないと思った。

メイは、努力家で母国語のネパール語を初め、中国語、英語、インド語、日本語を話す。

仕事や勉強で世界のあちこちに行っている。

「日本人、いい人ばかり。日本、大好き。ワタシ幸せです」

「それは、嬉しいと思います。でもいい人の振りして騙す人もいるから気を付けて欲しい

です」と何故か私も片言になる。

「大丈夫です。何処にでも悪い人います。

ネパールにも女の子騙してインドに連れて行ってイヤな仕事させて病気になっている子

沢山います」

「何処にも、そういう悪い奴がいるんだねぇ」

「そうです。だから気をつけないとダメです。ワタシの国のトモダチが言います。

メイちゃん、外国に行って働いてお金沢山あっていいね。

悪い仕事してるんじゃないの?」

「んー、失礼だな。嫉妬してるのかな?」

「そう、ワタシも外国行って働きたいって皆言います。でも勉強しない、動かない」

「何かを手に入れたかったら、努力することと、一歩足を踏み出すことだよね」

「はい」

メイの話し方は、穏やかでゆったりしている。

 いいなぁと思った。素敵だな人だと思った。

そして、信じるのは旦那の為でなく、彼女自身の為なんだと思う。

旦那が彼女と離れていて淋しいからと浮気をすることがあったら、その旦那は彼女を

裏切っているのではなく、自分自身を裏切っているのだと思う。

 

 この間の“夫婦”の話の続きがある。

センセイに悩み相談があった。

 二人の幼い子供がおり、三人目の子を妊娠した。

実家が北海道と遠いので、二人の子を連れて出産の為に5ヶ月、里帰りをする。

出産して間もなく、夫から電話が入る。

「もう帰ってこなくていいよ」

訳を問いただすと、浮気をした。そして、その女性と暮ら始めているという。

それを聞いた彼女は、生まれたばかりの子を含めた三人の子を連れて自宅に戻った。

 その後、一旦夫は戻ったが、二ヵ月後には、またその女の所へ行ってしまった。

「お前と子供三人かかっても、その女には負ける」と夫は、捨て台詞を吐いて出て行った。

 

 それに対するセンセイの回答。

「あんたが悪い。

男ってのは、コドモなんだ。

5ヶ月もの間、面倒もみてやんないで放っておいたら浮気するのが当たり前だ。

どーぞ、浮気して下さいって言ってんのも同じだ。

小さい子供がいて出産するのが大変だったら、母親をこっちによんだらよかったんだ。

親っていうのは、そういう時のためにあるんだ。

せっかく旦那が帰ってきてくれたんなら、コドモだと思って面倒みて手の平に上で転がし

てやるんだ。

それを、グチグチ嫌味言うから出ていっちまうんだ」

 

 その話を夫にした。

「何、言ってんだ!男をバカにするのもいい加減にしろ。

だから、俺はあの女大っ嫌いなんだ。

男だって親になったら甘えたこといってられないんだ。

自分の奥さんが自分の子供産むのに頑張ってんなら、助けになって当たり前で、

それを面倒みなきゃなんないなんて、そこまで男はバカなのか?」

「そーだよ、放っておいたら浮気する奴は、放っておかなくたってやるよ。

あの人オカシイよ。どんなことがあったって浮気した奴が悪いんじゃねえの?

奥さんは、小さい子供三人の面倒みるだけで手いっぱいでしょ!

それなのに、もっと頑張れっていうのかねぇ。

イジメがあった時、虐められる者が悪いっていう考えの人だね、あの人は」

「あの女は、ろくな男と付き合ったことがないんだな」

「そーだね。放っておいたら浮気するような男しか知らないんじゃないの?

それに、私は結婚したら、基本的には夫婦で家庭は作っていくもんだと思っている。

だから、今の親が孫子の面倒みすぎることや、口出しするのに反対なんだ」

 

私が長女を出産したときの帯明け(出産から21日は水を使わず、寝ていなければなら

ない)の面倒は、夫がみた。

我が家の夫婦の議論は、ちょっとしたモンだが、家庭の問題と子育ては先ずは親が、

夫婦で話し合うべきだと私は思っている。

 先ずは、最初の核である夫婦が話し合わないで、二人の考えが決まらないで、

答えを出そうとする努力をしないで、他所に話を持っていくのは筋違いだと思うのだ。

 

 今日は20日、メイちゃんは、18日に日本からネパールに帰国した。

旦那さんは、アラブから19日に帰国すると言っていた。

 今頃、4歳になる娘を交えて彼らはどんな時を過ごしているんだろうか。