臭い

 

「お父さん、クサーイ」

年頃になった娘が、必ずといっていい程言うセリフ。

「何なんだ!お前は!」と怒る父。

(ついに来たか)と諦め、「俺ってそんなに臭いか?」と妻に聞く父。

 

“ニオイ”ってヤツは凄いと思う。

乳児の前に、母親の母乳を付着させた布と、他の母乳を付着させた布を垂らして回すと、

自分の母親の母乳には、明らかに反応が違う。何度やっても違う。

 この場合は、乳児は親を本能で知り求めているということだ。

 

 色んな臭いがあるけど、人によって好みが違う。

10人の女性に、10人の男性の容姿は見ないで肌着の臭いを嗅いで好みの臭いを選ぶ

実験をしていた。

 すると、満遍なく好みが分かれた。

そこで、女性のDNAと男性のDNAを調べると、女性が選んだ男性のDNAは、女性の

それと大きく異なっていた。

 女性は、自分と遺伝子が似通っている、重なる部分の多い人の臭いは「クサイ!」と

言って嫌い、それが異なっている程、嫌でないどころか、好ましいという。

 遺伝子の異なった男女が一緒になることは、違う抗体や才能のカードを持ち寄ること

になり、より丈夫で多くの才能を持つ子供が出来ることになる。

 そのことを、女性は本能で知っているらしい。

男と女では、女の方が、鼻が利く。

女の子が年頃になった時、遺伝子の似通った父親の臭いを「クサイ!」と言って嫌がる

のは、年頃になって親離れをしなくてはならないその時期、正しいことなんだと思う。

 この場合は、親離れと自立の時期を本能で知っての拒否で、近親相姦などの危険も防ぐ

ことになるんだと思う。

 でも、だからといって失礼な言動をするのは未熟以外の何モノでもなく、身体は大人に

差し掛かりながら、人の気持ちを考えない言動は子供で、それを行う人は、そういう

ことをする自分にも、父親にもイラつくことになるだろう。

 反抗期も同じで、反抗期は親離れと自立のタメに必要不可欠なことなんだけれど、

反抗期だから仕方がないと、自分を律する努力を放棄することは、自分の成長からの逃げ

となり、そんな自分を好きになることも信じることも出来ず、自信を持てない。

まあ、自信は持つんじゃなくて正しい思考と行いをしてることで、湧いてくるもんだ

と、私は思っているけどね。

 

 話は変わって、ニホンザルの話をテレビで特集していたことがあった。

サルは、オスは何時でも発情状態なのだが、メスがオケーしないとオスは子作りが出来

ない。オスはメスの発情を匂いで知り、メスがその状態になると何時でも発情するらしい。

オスはメスの準備待ちでいるのだが、メスは身体のバイオリズムに動かされているの

で、子供に乳を飲ませていたりすると、発情状態にならない。

 すると、苛立ったオスは攻撃的になり暴力をふるってメスに怪我を負わせたり、

コザルを振り回して殺したりする。

 メスは子供を持つと、神経質になりながら強くなって、身を挺(てい)して子を守る。

これは、ニホンザルだけに限らず、熊なんかもそうだ。

 だけど、子供を殺されて子供が居なくなった母はメスに戻り発情し子作りをする。

オスは自分の子供であっても、種の保存の本能からメスが発情しない原因となっている

子供を殺そうとする。

 

近所の犬猫なども、メスが発情した臭いでオスは発情している。

あー、メスの方が主導権を握っているんだ。と思ったら、残念でした。

メスは、その時期が来ないと発情しない。

ということは、ミンナ、何によって動かされているんでしょうねぇ。

 でも、さぁ、動かされてばっかりじゃ、やだな。

亡くなった酵素浴の先生が言ってた。

「人間は、決まっていることを、自分の力で変えた時に、“生きた”っていうんだ」

って、それって、感情や欲望に流されないで自分の力で踏ん張るってことかな。