仕事

 友人がふと漏らした言葉。

「仕事が、嫌で嫌で仕方がない」

 彼女は、今年41歳になる。

午年の私の一回り年下、丙午(ひのえうま)の生まれ。

 どうして、そんなに仕事をするのが苦痛なのか?

「仕事がない、仕事をしないと困る」とは言うが、「仕事をしたい」とは決して言わない。

 

 私は、彼女を雇用する気はない。

何故なら、今の彼女は自分の好きなことにしか気持ちを込められないからだ。

好きな人には心を開くが、自分が尊敬しない好きでない人に対しての態度が悪い。

自分にとって都合の悪いことを言う人には、嫌悪し恨みを持つ。

 大体が、彼女が仕事を始めるとどういうことになるか、想像がつく。

同じような人と働いたことが、あった。

 そういう人は仕事になると、死んだようになる。

約束をまもれない。時間に遅れる。無断欠勤する。人の話を聞かない。

しかし、自分の好きな話しになると、打って変わって元気になる。

旅行、男、お洒落、音楽、映画、遊び。

センスがいい人だと思って期待しても、自分のお洒落にしか力を発揮しない。

人の為に一所懸命にはならない。やることが、ガサツ、失礼。

一生懸命無理をして働いたりするのだが、仕事が楽しくない。

だから、すぐに体調が悪くなる。

働く仲間を好きだったりすると、仲間にだけ気を遣うが、客には、気を遣わない。

仕事や客には、心を込められない。怖がる。

仕事のプロだったら、客を満足させ信頼されてナンボ。

自己満足で終わりにするなら、アマチュア。子供。

子供は自分の世界から外に出ない、自分が中心、自分にとっての居心地重視、だから

文句や陰口ばかり出る。そして、客もそれを察知する。

その結果、客はその人を頼りにせず、嫌がり、失礼なことを言ったりする。

そして、その人はますます、客を怖がり嫌うようになる。そして、客は…。

という悪循環ができあがるのだ。

 

 仕事のプロになれ!と、私は思う。

 

“仕事に心を込める”

その為には、体調と気持ちのコンデションを整える。

疲れていたら、心が何処かに行ってしまう。

やりたい放題好き勝手にやって、それでも仕事は出来ると思うのは思い上がりだ。

 

“仕事は、頑張るな!”

仕事を好きでないから、頑張らなければならない。

仕事が面白くて、楽しかったら、頑張る必要なんてないじゃないか。

お金を貰っているから、我慢するってのは、失礼。仕事を楽しまないのは、失礼。

仕事は生きるためにお金を貰うためにするんだが、お金に媚びてはいけない。

人はパンのみに生きるにあらず、でもパンがなくては生きられない。自給自足は基本。

「師、曰(いわ)く、これを識る者、これを好む者に如(し)かず、

これを好む者、これを楽しむ者に如かず」如かず、とは及ばずという意味だ。

 つまり、仕事の知識より大事なのは、好きであること。

好きであることより、楽しむことがもっと大切なのだ。

 そして、本当に好きになって楽しめるようになると、自ら知識を求めて勉強を始める。

それこそが本当の勉強であり、知識であると私は思う。

 

“気持ちのコントロールは、自分でしろ”

気持ちとは、気を持つと書く。

気、感情に振り回されてはならない。自分が主役なのであって感情や気は自分の手下だ。

手下に自分を乗っ取られ、勝手に使われてはならない。

乗っ取られると、欲望に走り、やってはいけないことに歯止めが利かなくなる。

快楽に溺れ、嫌なことは我慢が出来ず、逃げの構造となる。

そうなると、好きなことをしていても、何をしても楽しいと思えなくなる。

空しくなるのだ。

自分が自分でないような、居心地の悪い気持ちになったら要注意だ。

心が空しい空き家になっているのだ。

そこに自分を戻すには、自分で自分に手綱をつける。

それをするのは、自分しかいない。自分以外には、出来ない。

 

仕事という題にしたが、何でも同じだと思う。

歌を歌っている人、物書きをしている人、子育てをしている人、教師、研究者、医者、

コンビニ店員、スポーツ監督、居酒屋店員、保母、保険外交員、銀行員、絵描き、

ダンサー、サラリーマン、みんな、同じ、楽しんで心を込めて行っているかどうか。

そうすると、生活に張りが出て、夜はよく眠れるようになる。

安眠は、楽しんでよく働いた人へのご褒美だと聞いたことがある。

働くとは、人が動くと書く。よく動けばいいのだ。よくとは沢山ということではない。

質の問題だ。質より量といったりするが、量より質が大事だ。

“はたらく”とは、傍(はた)を楽(らく)にすることだという。

傍を楽にすると、どんどん自分が楽になるから不思議だ。

そして必ず、自分を好きになって、自信が持てるようになる。

でも、犠牲的精神あってはならない。

自分を大切にすることが、仕事も周りも大切にすることなのだ。

 “情けは人のためならず、廻り回って己が為よ”というが、私はその次に

“己の為に、己が為も思わず行う”と足している。

 

    追加

 “清濁併せ呑む”という。

 仕事をするにも働くにも、自分のすきなことをするにも、気持ちのいいことばかりじゃ

ない。

 美味しいことだけじゃ生きていられない。嫌なことも含めての人生。

その嫌なことの中にこそ、生きるヒントが隠れている気がする。

 嫌なことから逃げていたら、大事なことに気がつかない。

嫌だと思うことっていうのは、自分を映す鏡のような気がする。