中一少女部活事故事件

 2003年の春に、一人の少女が中学に入り、柔道部に入部する。

そこに、身長180cm120キロの中三の少年が部長を務めていた。

そこの顧問の教師は、少年に「部長をやって柔道部を仕切れ」と一方的に支持し、

運営を任せきりにしていた。

 入部したその少女は、部長である少年の指導という名の制裁を受ける。

その少年は、少女だけではなく、以前から一年生を標的にプロレス技や関節技、

絞め技を掛けて泣かせては楽しんでいたという。

 大人しい少女に対するイジメと虐待は、常識の軌道を逸していた。

少女は、9月に頭を打ち付けられ約10日の入院をしている。

 ここで、何故その少女は部活を辞めなかったかという疑問が出る。

考えてみたらいい、中学に入って入部した部を辞めるということは、事件でも起きない

限り許されているかどうか、ハッキリとした何かが起きない限り自分、本人も辞める

ことは、自分に負けるような気持ちになる。

 少女は部活を続けたいと両親に言った。

 

 2003年10月、少女が練習をしていて足を痛めた。

控え室で足を冷やしていると、少年が現れた。

「何をやっているんだ、たるんでいる、個人指導してやる」と激怒。

嫌がる少女を体育館に引きずり出し、数回プロレス技で投げる。

「やめて、助けて」と訴える少女を助ける者は、そこには一人も居なかった。

 その後、壁に押し付け怒鳴り、足蹴りを続け、

身体を持ち上げ、数回、頭から叩きつけた。

 それを見ていた生徒はリンチだと思ったという。

そこに居たその他の生徒からの証言も、保護者を通じて話されたが、同様であった。

振り回されて床に落とされた少女は、グニャリとゴム人形のように落ち、失禁し動かな

くなった。

 副顧問が呼ばれる。

学校は、家に電話する。

その間、少女には何の処置を施されることもなく、救急車もよばれなかった。

母親が駆けつけた時、少女は床に倒れたまま唸り声を上げて呼吸も苦しそうな状態だった。

と、母親は言う。

副顧問は「休憩中に具合が悪くなった」と母親に言った。

その後、救急車に通報。

 

両親と共に病院に運ばれた少女は、頭部打撃による急性硬膜下出血による意識不明の

重体。

8時間に及ぶ緊急手術が行われる。

医者は、校長を激しく叱責した。

「一体、学校は何をしたんだ。どんな管理をしていたんだ!」と、

そして静かに「やってはならないことを、していましたね」と言うのを父親は聞いた。

 

 その時の状況は、教師とそこに居た生徒で検証されることになるが、教師から生徒達は

「余計なことはいわないように」と釘を刺される。

両親は学校側からは、「頭は一切打っていない」という説明を受ける。

市の教育委員会へは「少女の母親は、学校や柔道部、柔道部員には責任がないと言った」

と、捏造(ねつぞう)の記述を行う。

 柔道部の父兄の説明会では

「大した怪我ではないので口外しないように」との口封じをする。

 学校で行われた緊急会議に、少女の両親は呼ばれず、両親の言った言葉の一部である

「ご迷惑をかけて申し訳ありません」という言葉だけが、集まった父兄に伝えられた。

 

学校は事件の隠蔽(いんぺい)を公開したのは、3ヵ月後のPTA総会だった。

不信感で詰め寄る父兄に、逃げと誤魔化しの答弁だけを学校は行う。

両親は真相が知りたいと部員を集め話しを聞いた。

その結果、上記のような事実を知る。

 

 学校や警察は、これは事件でない事故だという。

あるテレビで、「警察を信じて、裁判所に委ねましょうよ」と言う者が居た。

事件は現場で起きている。真実は現場にある。そこに居た生徒が見ている。知っている。

何より、少女の脳の損傷が総てを物語っていることだ。

 

 少女は2年3ヶ月の入院後、2006年1月自宅療養となり、9月に16歳の誕生日

を迎えた。

 

「あの日の朝、張り切って慌てて出かけようとする娘に思わず

『あんまり張り切って怪我なんかしないでね』って言ったら

『わかってるよ』ってそんな会話だったんですけど…、

『うん』って、いつもと変わらない会話だったんですけど」

その3時間後に学校から、副顧問からの電話が入り慌てて学校に駆けつけることになる。

「ずっと学校に置いてきぼりっていうか、置いてきちゃったまま、私が、なんか、

迎えに行ってないような気がして…」と、母親は言う。

 

母親はパートを辞めた後、ヘルパーの資格を取り彼女の目覚める日を待つ。

「特にこう、雨の時とかって、近いのに「お迎えにきて」とかって、よく迎えに行った

ことがあったじゃないですか。

だから、どうしても雨の日とか、丁度下校の時間帯に前を通ると、なんかこう、特に傘を

差して立ってる生徒さんとかが、やっぱり門の所に立ってるんですよ。

なんかあの、なんかこう、そのままこう、トコトコって出てきて乗せて帰れば、また

なんか何事もなかったかのような生活がね。また始まるかなって、いつも思いますね」

「普通に家族で暮らしているってことが、普通じゃないんですよね」

 

 事件後、母親は一度も熟睡したことがないという。