駐車禁止

 世の中は、駐車に厳しくなった。

一人一人のモラルの低下、他人の身になって考えるイマジネーションがなくなって規則や

キマリ、法律によって縛るしかなくなってきている。

 私は、このところ腰の痛みがなくなったと思ったら、背中が痛い。

腕肩の痛みは、昨年から続いている。五十肩というやつだろう。

 自分の身体をメンテナンスしろよという警告がイエローカードからレッドカードになり

かかっている。

 今日こそは、マッサージに行こうと決めて外に出た。

店の前の道路に車が停まっていた。

すぐ横にある駐車場はがら空きだ。

車から、嬉しそうに話す60歳位になる二人の女性が降りてきた。

「あのー、お客様ですか?」

「はい、そうです」と何の疑いもなくその女性が答えた。

「すぐ隣が、駐車場になってるんですが…」

「停めた方がいいですか?」       (当たり前だろう?)

「ええ、最近厳しくなってますからねぇ」 

「すみません」             (私に謝られても)

「いえ、そんな、つい最近も外車で来たお客さんが、ここに停めていて追突されたんです

よ。面倒がらないで、駐車場に停めた方がいいですよ」(方がじゃなくて、停めるべき)

「すみません、すみません」と頭を下げながらその女性は車に戻った。

もう一人の女性は、ちょっと機嫌の悪くなった顔をしていた。

 

 その、最近外車で追突された人は、道路の端でなく中央線の方に出て停めていた。

それも、斜めに曲がったまま。

ドカーンという音で、店の外に出たその人は、間髪入れず

「ちょっと!何処見て運転してんのよ!」と怒鳴り、自分の車の後ろを覗き込んだ。

初老の男性は、おどおどして震えていた。

 

自分に甘く、他人に厳しい人。

自分は、すぐ横にある駐車場に停めず、それも端でなくおお威張りで、道路の中央寄りに

斜めに停め、ぶつけた人を大声で責める。

 

平和ボケして、注意力も危機管理能力も退化している人。

「駐車場に停めた方が、いいですか?」って、子供でも知ってることだ。

キマリは守る。キマリでなくても、人の迷惑になることはしない。

思いやりの気持ちを持てなんて言ってるけど、その前に人の迷惑になるな!

 なーんて、「怒ってばかりいるから身体も怒っているのかなぁー」って言ったら、

「そのとーり」というやつがいた。

 揉んでもらうと大分調子がよくなって、翌日もマッサージに行くことにした。

「じゃあ、行ってくるね」と言うと

「そこのマッサージさんは、身体だけじゃなくて性格も直してくんねえかなぁ」と言う

小さな声が聞こえた。