野球を読んで(対談)

寿玄夢・どうだった? 面白かったか、面白くなかったか?!

一読者・うーん、面白いとかじゃあなくて…。

寿・ なくて、なんだよ。

一・ こんな学校ばっかりじゃあないよ。

寿・ 当たり前だよ、学校も人間と一緒でみんな違うよ。

一・ なんだか、私情が入っているような気がする。

寿・ 事実をただ書いたつもりでいるけど、まあ俺の好みが入ってるつうのは明白だな。

一・ 事実ってどこの学校なんだ?。

寿・ だーかーらー、俺の書いてることは、それがウソだとかホントウだとか、

何処の誰のことだとかってことは問題にして欲しくないって、何回言わすんだよ。

一・ だって・お前が事実だっていうから聞いたんじゃねえかよ。

寿・ んー、だって作り話だっていえば自分の都合のいいように話をでっちあげてるって

言うんだろうがよ。

でも、どこの話かバレないように、これが男の学校か女の学校か、スポーツも

サッカーかバレーかテニスか、分かんねえに変えてんだよ。

ところがそれが、そのまた逆にどれにも当てはまっちゃうから面白いよな。

   でも大事なのは、そこにあるハート、ハートはみんな同じだよ。

一・ だけど、寿玄夢は、絶対第五高校のほうが好きだね。

寿・ うん、好きだ。

一・ ほーら、やっぱりな。

寿・ 好きでいけないかい。

一・ 結局、寿玄夢は反体制の人間なんだよ。

寿・ なんだよ、反体制の人間って?

一・ 弱いものとか、世の中で認められてないものが好きなんだよ。

寿・ 第五高校は弱いか?認められてないかい?

一・ 世の中から見たら結局落ちこぼれの高校で、いま流行っている負け犬じゃあないか

寿・ なんだよそれ?俺は人間を書いてるんで、犬のことを書いてんじゃないぞ。

一・ じゃあ負け組み、最近三十過ぎて結婚してない女とかそういうらしいぞ。

寿・ 何と戦って負けたんだよ。

一・ 兎に角、一般人に認められない、ちゃんとした形を持たない人間は負け組みなんだ

ってよ。

寿・ ちゃんとした形って何なんだよ!?

一・ 名前を言ったら、すぐに分かる学校とか、世間的に恥ずかしくないちゃんとした

結婚をして子供を持って、初めて人として一人前って認められるんだよ。普通は。

寿・ ん、じゃあ何か、結婚して子供持ったら誰でも一人前か?

名前が通って、形さえ整っていれば、それでいいってか!?

一・ お前は本当に理屈っぽいな。もっと単純に考えろよ。

人が見るのは先ずは形だろう、その中身までは、すぐに見えないだろうよ。

寿・ その見えない中身が、一番大事なんだろうが…!

いくら見掛けが立派だって化けの皮はすぐに剥がれるさ。

一・ なんで形の整っているものは、中身が駄目だって決め付けんだよ。

寿・ 形が整っているもんが駄目だなんて、いつ言ったんだよ。

一・ お前の言い方はそう聞こえんだよ。

寿・ そう聞こえたなら訂正する。でも形は何でも中身の方が大事だって俺は思う。

一・ だけどそしたら、一生懸命頑張って形を作る必要がなくなっちゃうってことだよな。

寿・ いや、それは違うな。大体、一生懸命じゃあなくて一所懸命が正しいと思うし、

一生は結果的にそうなるんで、一所にしか懸命にはなれないよ。

それに頑張った結果に形がついてくるんであって、形のために何かするってのは、

本末転倒になると俺は思ってる。

一・ 何でお前はそう決め付けんだよ。

寿・ 決め付けてるつもりはない。そう思うって言ってるんだよ。

形も大事だけど、目に見えない中身はもっと大事で、そのために人は生きている

んだと、俺は思うんだ。

サンテグジュペリだって言っているだろうよ、一番大事なものは目にみえないって…。

一・ それは、努力したくない者の詭弁だ。

寿・ じゃあ、俺は努力してないか?

一・ お前は別だよ、お前は特殊だから。

寿・ いや、特殊なのは俺だけじゃない。

すべての人が特殊で特別な人間なんだって俺は思うんだ。

   だから、勝ちも負けもない。

   ただし、それはお前が言ってる勝ち負けはないが、自分の中の勝ち負けはあると

思う。それは、どういう事かっていうと、例えば野球の中でいったら、

病院を誰も教えてくれなかったから教えてやらないって言ったところだ。

それは、自分に負けたと俺は思うよ。

   あと、自分より強くなりそうだからっていじめをして潰そうとしたときに、

自分の汚い心に負けたんだと思う。

   俺の座右の銘に(天知る、地知る、我知る)ってのがあって、

誰が知らなくったって、天が知ってる、地が知ってる、自分が知ってる。

俺はそれがすべてだと思う、それだけでいいんじゃないかって思ってるんだ。

   そして、それが一番心が楽になることであり、一番怖いことでもあると思うんだ。

一・ お前って必ずそうやって自分の考えに話を持っていくよな。

寿・ じゃあ、お前は形が良くて中身がないのと、形は悪いが中身があるのとどっちが

いい?

一・ 形が良くて、中身もあるのがいいな。

寿・ お前、それは欲張りってもんだよ。

形に囚われると殆どが、中身に気持ちがいかなくなっちゃうんだよ。

   中身についてきて形が出来るんであって、それが素晴しかったらそれはホンモノで

凄いと思うけど、それは至難の業で並大抵のことじゃないぞ。

それは最高に尊敬するけど、取り敢えず一般市民は、欲をかかずに結果を気にせず

精進すればそれだけでいいんだと俺は思ってる。

   人事を尽くして天命を待つ。だよ。

でも天命に媚びたくはない。で、もって至誠天に通ず。だ。

しかし、それが通じないんだったら、それまでだと俺は思っている。

一・ つくづくお前は難儀なやつだよな。

寿・ うん、有難う。俺はそんな自分が好きだ。

一・ うん、好きにやってろ。

寿・ うん、やる。

       対談 終わり