珠理(じゅり)

 

 人はみんな?

自分は普通だと思っている。

 だから、みんな他の人も同じように見えて、同じように感じ、同じように考えると思っ

ている人が多い。

 本当にそうかなぁ。

 

 フロイトだったかが、自分の考える事が人も同じに考えると無意識に思っていて、

「みんなそう考えているでしょ」と自分の考えを人に投げかけ映し出すことを“投写の

原理“と言ったと聞いた時、あー人は自分の心を隠しているつもりでいるが何かあった

時、ポロリと自分の心を出してしまう生きものなんだなぁ。と思った。

 そして、みんな同じだと人を見切って断言している人ほど自分は特別だと思っている

気がする。

 あと、自分は普通じゃないんじゃないか?って自分を否定している人が居るけど

どーよ、普通って何さ。

普通っていう隠れ蓑(みの)に隠れたって、自分の幸せと満足は自分の内側にあるん

じゃねえのかなぁ。

 

 珠理はいつからそうなのか人の何かを感じる。

最近、朝の連ドラで人の気持ちが見えてしまう青年が出ているのを見て、

あららぁ、やっぱりこういう人って居るよね。と思った。

 それは漫画のサトラレだとかホムンクルスなんかを読んでも思う。

不特定多数を普通というなら、少数派を普通でないというなら、普通の人が見えないモノ

が見える人が居る。

 珠理は見えない、見えたことも一度もないが、見える人と知り合い話す機会が多い。

それがあまりにも多いもんだから実は世の中見えても黙っている人で満ちているんじゃ

ないの?と思ったことが何度もある。

 

 たまたま何かを見た人は、結構喋るが、見える人は、不用意にそれを喋ることをしない。

でも、見えるのがこれって自分だけか?っていうのと、これはどういうことなんだろう

っていうのは疑問に思っているみたいで、この人になら話しても大丈夫だと確信すると

話し始める。

 

 珠理は子供みたいな人だ。

あけっぴろげで屈託ななく、物おじせず、嫌なことがあっても恨んだりひねくれたりし

ない。

 終わったことに頓着せず、これから起きることをあれこれ考えて不安を抱え込んだり

しない。

 朝起きて夜寝るまで何時も今目の前にあることに心が向いて、自分の身体と心と対話し

ている。

 最近のテレビで子供を天才にするには、みたいなのをやっているのをチラッと見た。

テレビを付けた時は終わる頃になっていたが、そのコツに

「物おじしないこと。と、根拠のない自信」という言葉が聞こえた。

 それは、美人だから、勉強が出来るから、才能があるから、誰かに愛されているから

などという所から生まれるものでなく、何もなくても自信は存在しているものだと珠理は

思う。

 だから、自信がないということがよく分からない。

あ、あと力を出し惜しみせず、努力を続けることも基本。

 根拠のない自信だけみたいなのは、ちょっとね。

 

珠理は、良いことは勿論嬉しいが、嫌なことはそこで何かを本気で考える良いチャンス

だと思う。

辛い時こそそこから逃げずにどう勇敢果敢に取り組んでいくか自分を試す機会だと思う。

人生辛くて当たり前、辛くなかったら大儲け。だと珠理は思っている。

 

年齢58歳、漫画喫茶を経営。

 

 さて、連載小説“珠理”が始まるよ。

まぁ、どーでもいいんだけど、これは小説だからね。

 ここにあることが、本当のことかとか、何処かの誰かのことか、なんて陳腐なこと考え

ないで読んでくれたらいいな。とワシは望んでいる。