裸の島

 

 6時前から8時まで草引きをした。

田んぼを渡る風が気持ち良くて、乾いた土をしっかり掴んでいる草を引くとブリブリと

抜ける。

 この所、暗くなって手元が見えなくなるまで草引きをしている。

仕事、家事、合間に子守り、縫物。そして、趣味が、草引き(普通の)と草引き(お祓い)

の手伝い。

 働き者だなぁと思う。

自分、働き過ぎじゃねえの?と思った時、思い出す映画がある。

 

 進藤兼人監督の映画“裸の島”

1960年、製作費350万で作られたという白黒映画。

 

瀬戸内海に浮かぶ小さな島、電気、ガスは勿論、水のない島に、延々と水を運ぶ夫婦。

舟で渡って水を汲み、それを舟に乗せ櫓(ろ)を漕ぐ。

島に着く、舟を繋いで、水の入った桶(おけ)を担いで島の斜面を登る。

海の見える斜面、畑に蒔かれた種、小さな芽に一つずつ水を掛けていく。

それが、延々と繰り返される。

半分裸のような貧しい暮らし。

二人の息子が居て、家族で、外で食事をする光景があったりする。

ある日、尾道にフェリーで出かける。

 音がないのに、その喧騒に驚く家族。

台詞なしなのに、すべてが雄弁。

暑い夏、太陽、乾いた土、斜面を歩いて、水を運ぶ、水を掛ける。

白黒なのに、海の美しさが、空の美しさが尋常でない。

 繰り返される日常。

ある日、島に戻った舟に、下の子が手を振る。

 町に出た時、欲しがったおもちゃの刀を買ってやった子供たち。

あわてて家に走る。

 家の中には、ぐったりと横たわる長男。

医者を捜し出し島に連れてきた時、もう息はない。

 

 学校の仲間が、舟でやってくる。

みんなの手で、子供が埋められる。そこに、刀も乗せられる。

 島を旋回し帰っていく舟を、島の上から追いかけて見ている弟。

 

働く苦しさ、貧しさの重み、島、海、空、四季、家族。

 

草引きをしている時、何だか、あの映画を思い出す。

顔を、首を、汗が伝い、下着は勿論、長袖の上着にまで汗が染みだす。

 足腰が痛みだし、色んなところが痒くなる。

時々吹く風が、一瞬だけ天国に連れて行ってくれる。

 手を休めて空を見上げると、鳥が木の上で鳴いている。

 

 まだまだ、甘いんだよなぁ。と、思う。

明治生まれの祖父が言っていた。

「人間、辛くて当たり前、たまにいいことがあったらめっけもん。

何も(辛いことが)ないのが当たり前と思ってるから、愚痴が出る。

辛いのが当たり前と思ったら、いいことあったらありがたくてしょうがねぇ」

 あと、「働ける、そのことが幸せなんだ」って言った。

 

 そうかぁ、と最近思う。

働くのは、自力と思っていたが、「働きたくても働けねえこともあるんだぞ」とも祖父は

言ってた。

 そうかぁ、働ける幸せは、与えられてる幸せなんだな。

 

 

 

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