帰省弁当

 

 母、一人。

息子、二人。

 長男は、高校を卒業して、3月から住み込みで働いて学校に通える所に行った。

次男は、ちょっと障害がある。障害者の学校に通う小学生。

 最近、学校に行きたがらない。

毎日遅刻しながら何とか行く。その理由は「僕が休むとケイ君が悲しむから」

 親たちも悩みながら頑張っている、子供たちも壁にぶつかりながら頑張っている。

辛いことがあるのは、自分ひとりだけじゃない。

 

 先週、長男が里帰りしてきた。

他県に行ってから、音沙汰のなかった長男。

 こっちから電話するのも何だし、何かあったら息子から電話があるだろうと、

電話したいのを我慢してきた。

 我慢強くて、口数の少ない長男。

でも、ちょっぴりワガママな所もあると思ってきたが、それで普通。

いや、普通以上かも。

2泊3日の帰省は、あっという間に過ぎた。

 大好きなニイちゃんが居ると、次男の喜ぶこと。

 

 これから電車で帰るというので、弁当を作った。

「ニイちゃん、これ電車で食べてね」と、言うと

横を向いて返事しない息子。

 何か怒ってるのかな?「お弁当、ジャマになるかな?」

向こうを向いた息子の肩が揺れだした。

そっと覗くと、パラパラと涙がこぼれ落ちた。

私も涙が溢れ出した。

「ウチっていいな。ウチに帰りたい」と息子は言ったが、涙を拭いて、

笑顔になって電車に乗った。

 私も精一杯の笑顔を作った。

 

 あれからも、息子から電話はない。

私もしない。

 精一杯のやせ我慢。それが、私たちの生き方。

 

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