猫糞(ねこばば)

 

 以前に書いた猫の“ミャミャ”が、我がに来てから、2ヶ月が経った。

最初は全く鳴かなかった猫が、私の顔を見ると「ミィー、ミィー」と鳴き続けるように

なり、今は「お返事は?」と聞いてミャーと答えないことが、ない。

 薄らハゲて何時も蚊がとまっていた額には毛が生え揃い、痩せこけていた身体は、丸く

なって艶まで出てきた。

 

 最近、日中は暖かいが、朝晩は大分冷え込むようになった。

夕方にゴハンをやると夜中は何処かに居なくなるミャミャだが、日中は家の西側にずっと

居る。

青い台車に乗ったミャミャは、風が吹くと寒そうだ。

猫好きの子供が「ネコ、鼻、垂らしてるよ」と何度も言いに来た。

大きなカゴを横にして置いてやったら、風の吹くときはそこに入っているが、それでも

風が通るようで寒そうだった。

 

 室内で飼っているダックスのマイロは、5年前の8月に生後2ヶ月で我が家に来てから

毎晩私と一緒に寝ている。

 私は腰痛持ちで腰を庇(かば)ったり、ストレッチをして布団の中で動きたいのだが、

常にマイロが傍にくっ付いているので気を遣うことになる。

 一時、マイロを何とか私の布団じゃない所で寝せようとしたことがあった。

彼お気に入りのカゴに毛布を敷いて寝かせようとしたり、お気に入りの昼寝クッションを

布団の横に置いたりした。

しかし、日中は寝ているクッションや毛布でも夜になると寝ようとせず、私の布団に

もぐりこもうとして周りをグルグル歩き回り、私の顔をペロペロ舐め、挙句には悲しそう

な「クーン、クーン」「ヒー、ヒー」攻撃が1時間以上続くのだ。

 ついに根負けして、結局は未だに私の布団の中で一緒に寝ている。

その時に用意した一人寝(一匹寝)用の布団にドーム型クッションがあった。

要するにネコベッドの屋根付きみたいなやつで、中にスポンジが入っていて見るからに

暖かそうなものだった。

 そうだ!アレがあった。と、思い出した私は、サンルームの端にガラクタの下で埃

だらけになっている赤と緑のチェック柄のドーム型クッションを引っ張り出した。

 マイロに見つからないようにコッソリ出したのだが、早速マイロがやって来て

それはボクのだとワン!ワン!主張する。

「あんた!これに寝なさいって言った時は、いらないって知らん振りだったでしょ!

あんたはお母さんと寝てるんだから、これはいらないの!」

と、ドームを小脇に抱えて階段を下りようとすると、ピョンピョン飛びついてドームを

欲しがる。

 それを振り切って裏口から外に出ると、「ミャー」と、早速ミャミャがやって来た。

横にしたカゴの中にそれはスッポリと納まり、カゴの上にコンパネの板を乗せると雨も

防げる。

 良かった良かったと、その晩は安心して家に入った。

 

 2,3日してミャミャが自分の寝床に入らない。

中を覗くと、暖かいようにと子供たちが毛布の切れ端やタオルを入れたようで、中が何

やら一杯になっている。

その日は小雨模様だった。

「あーあ、これじゃ入れないよね」と中で団子になっている布を引っ張り出そうと手を

突っ込むと、ベタッと指にくっつくモノがあった。

その臭いを嗅ぐとマサしく猫糞。

(ゲッ、寝グソかよ)と中を掃除しようかと思ったが、もう薄暗く、又、クソに触りそう

なので翌日に掃除することにした。

 

 翌日、ミャミャがヤケに臭く、耳の後ろ横から黄色い膿(うみ)がたれていた。

どうしたのか調べようとするが、身体は撫でさせるがそこを見ようとすると逃げ回る。

 低刺激の薬は付けたが、結局、ちゃんと見られるようになったのは今日。

何と、膿の出ていた所は深くエグレ、その横は小指半分くらいキレイに剥げていた。

 喧嘩でもしてやられたのだろうか?と、考えて、それで、謎が解けた。

寝床ドームの中のクソは、怪我をした恐怖と痛みでのウンコだった。

そして、ウンコと一緒にミャミャの毛ではない白い毛があった。

あー、あれは喧嘩相手の猫の毛だったのか。

 

 その話を娘にしたら、

「ミャミャを自分の家に連れて帰って、今飼っている黒猫と一緒に飼おうかな」と言う。

それを聞いて「人間の思いで良いと思うことが、猫のシアワセとは限らないと思うよ」と

私は言った。

 

 猫糞(ねこばば)っていうのは、悪事を隠す様、拾ったお金をこっそり自分のものと

決めこむことをいうが、猫が自分のした糞を後ろ足で砂を掛けて隠す様子に例えての

言葉だと聞いた。

 

 でも、ミャミャの糞はホントウに臭かったなぁ。

猫のウンコは、犬のウンコより臭いね。

 nekobaba.htm へのリンク