ポリバケツ

 

 友人が、某有名私立小学校の給食の仕事についた。

東京でもお金持ちのお子様だけが入る、女の子だけの小学校なんだそうな。

「箱入り娘で大事に育てられてきて、乱暴な男の子と一緒では心配っていう感じなのか

なあ?」と彼女は言う。

そして、そこにいるお母様方は、なぜか一様に皆お美しく、スタイルも良いのだと

いう。

しかし、着ている服が違うのにもかかわらず、皆同じ印象を受けるのだという。

そこには、まるでルールでもあるかの様に色は黒、白、グレー、ベージュ、茶など上品な

カラーでまとめられ、総てシンプルな形であるのに、その品質(クオリティ)の高さは、

生地から縫製まで並みのものとはひと味違うと分かるんだという。

皆さん品の良いバッグを持ち、上質な靴を履き、セカセカせずに丁寧にお話しし、物腰が

優雅なんだそうな。

「そこの生徒さんたちも良い子たちだと思うのだけれど…」と友人が口ごもる。

「何よ?」と聞くと、

 昼食の時間になると、ホールに集まって生徒全員でお食事するのだという。

先生が、「世界には満足にごはんを食べられない子供達もたくさんいるのですよ。」と

お話し「今、こうしてごはんを食べられることに感謝しましょう」と促す。

子供達は、感謝の言葉を口にする、そして食事が始まる。

 そして、ビーフストロガノフ、ビーフシチュー、カレーなどの、汁物に牛乳やお茶が

数滴入ったりする。

すると、それを持って配膳、おかわりなどの食事のお手伝いをしている友人の所へ来る

のだという。

「これ、入ってしまいましたの。」

「はい?」…だかーらぁ?だから何なんだ!と友人は言わない、言えない。

「変えてください。」とお子が言う。

 そして、数滴牛乳の入ったビーフストロガノフは、ポリバケツの中へ行くことになる。

何故か?そこのお子様達は、よく落とすのだという。

パン、果物、その他諸々。そして、それらはすべてポリバケツ行きとなるのだ。

洗って食べるという事はしない。

そして、毎日毎日ポリバケツは満タンになる。

昨日は、ホットドックが出たのだそうだが、ソーセージだけ食べて捨てられたパンで

ポリバケツは いっぱいになったという。

 彼女達は、毎日感謝の言葉を述べながら、毎日ポリバケツをいっぱいにする。

 

マリーアントアネットは、餓えを訴える人々に

「食べるパンがないならお菓子を食べたらいいのに・・・」と言ったという。

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