プリズンドック

 

 最近、“プリズンドック”というアメリカのドキュメンタリー番組を観た。

以前、娘が“プリズンブレイク”という映画が面白いからとレンタルで借りてきてくれた

ことがあった。

 プリズンが刑務所や更生施設のことだとその時に初めて知った。

その映画は、無実の罪で捕まった兄を救うタメに、天才的にIQの高い弟が、兄が脱出

する為の暗号地図を身体に彫って、罪を犯して刑務所に入るちゅうところから始まる。

最初は面白いと思って観ていたんだけど、罪を犯した者が償う手助けと、更生する為に

存在している刑務所に働いている人たちが、犯罪者以上に非人間的、非人道的で心が壊れ

ていて、それに暴力的で残酷なのに嫌気がさして観るのを止めた。

 きっと、私は変わり者なんだろう。

 

 “プリズンドック”は、アメリカ、オレゴン州にある青年刑務所で、

「ドックプログラム」に取り組む青年たちの様子を映したものだった。

 20歳前後の刑務所に入っている男達。

体格の良い者、根暗そうな感じの者。

白人、黒人、スペイン系など様々な人種の罪を犯した若者が、そこに居た。

 ドックプログラムとは、虐待されたり、捨てられて保健所に保護された犬を引き取り

そこの青年に面倒をみて、躾をさせるというものだった。

 それは、犬と一対一で、毎日3時間、3週間行われる。

 

 兄の諍いで助けようとしてその相手を殺して口が利けなくなっていた青年。

麻薬中毒の母親に育てられていたが、中学に入ってから父親に引きとられたがその家に

居場所がなく犯罪に手を染めていった青年。暴力と虐待を受け、犯罪に走ったって、

 さり気なく説明してたけど、子供だった時に否応なしに与えられる環境の中で彼らも

被害者だった。

 

 兎に角、犬たちがミンナ可愛いかった。

そして、脅えた顔が幸せそうな顔になっていくのを見ていると涙が出て出て。

 

最初、脅えていた犬が嬉しそうに青年の後をついて歩くようになる。

暴れていた犬が、青年のいうことをきき、後を追うようになるんだ。

 

でも、変わっていくのは犬だけじゃない。

汚いことは嫌だと言っていた青年が、進んで糞の片付けをするようになる。

 怒りっぽくてキレやすかった青年が、我慢をするようになる。

暗い顔をして口をきかなかった青年が、周りに居る仲間に話しかけるようになった。

 誰かの助けを借りないと一人では面倒をみられない。

犬に信頼されている喜び。ちゃんと役目をこなし、犬に好かれているという自信が、

笑顔になる。

 

 犬は3週間すると、新しい飼い主を捜す。

そして、別れ。

 今回、映していたのは、犬の面倒をみるのが初めて青年達だったが、ミンナそこに

居る間に何匹もの犬を育てて社会に送り出す。

 

 彼らの言葉。

「犬に新しく生きるチャンスを与えた。そして、自分も犬からチャンスをもらったんだ」

「犬も捨てられて辛い思いをしてきた。それでも、人を信用しようと頑張っている。

 我慢と思いやりを教えられたよ」

「犬が我慢を教えてくれたよ。

 これからの人生を悲観しなくなったよ。

自分は一人で生きてるんじゃないって分かった」

「犬も人も、ミンナ違う個性で生きているんだね」

 

 そこのプリズンは、15年で300人の刑期を終えた青年を送り出しているんだとさ。

で、再犯が殆どないんだと。

 その“ドックプラン”を作った女性が言っていた。

人が生きるのに大切なことは、感情表現、精神力(根気、我慢)、感情のコントロール。

だって。

 犬だってそういう人が、好きだよなぁ。

 

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