躾

旦那も子供も最初の躾が肝心だと聞く。

私の家族は旦那も子供も役に立たない。

私がいくら忙しく立ち働いていても、まるでそれが見えていないかのように何かを頼んで

くる。

両手に何かを持っていても、出掛けるために急いでいても「お母さん、あれ出して!」

と当然のように頼んでくる。

いや、あれは頼んでいる態度ではない。アゴで遣うのだ。

 急いでいるので何か頼もうと思ったら、それに対する説明の方が、手間が掛かる。

やってもらえば恩に着せられ、思うようにはならず、後始末の方が手間が掛かる。

「あーもう、嫌んなちゃうなあー」と立川さんに愚痴った。

それにしても立川さんのご主人は、この間のバーベキューでもグンを抜いていた。

手が掛からないのだ。それどころか役に立つのだ。

 大体の男と子供は、面倒臭そうなことはやらず、面白そうな所だけ好き勝手に手を出し

てくる。

だから、「あー、それはやらなくていい!」「あー、出さないで!」

「ゴメン、それ動かさないで!」「ちょっと、そこどいてくれる?」ということになり、

ふくれだした男と子供のために下準備や下ごしらえの出来あがったところで

「これ炒めてくれる?」と炒めてもらう(炒めさせてやる)ことになるのだ。

そして、やつらに材料をこぼされ、最後の味付けで味見をしてもらって、

「最後に入れた塩の一匙がこの料理の味を決めたね」と話題にして顔を立ててやることに

なるのだ。

それはそれで可愛くないこともないのだが、彼女の夫は額に汗し、寡黙でありながら

ニコニコと笑顔を絶やさず、回りをよく見て気が付き、それでいて押し付けがましいとこ

ろがない。

「どうしたら立川さんのご主人のようになるの?」

「うーん、そうですねえ。うちの主人だって最初から何でも出来たわけじゃないんですよ。

でも思うんですけど、夫とか子供は自分が楽するために使っちゃ駄目だと思うんですよ。

夫や子供に何か頼むってことは、自分がやる以上に手間が掛かって、それでいて自分が

やるよりうまくいかないって思っていないと。

最初は大変ですよ。ゴミ一つ出すんでも、こう分けて、こう縛って、これはココ、

これはココって隣に居て手は出さないで見てなくちゃならないんですよ」

「うわー、そんな事ぜってー出来ねー。むりむり!」

「それじゃ、駄目なんですよ」

「だって、絶対手を出しちゃうもん」

「そこが我慢なんですよ。だから、最初は忙しい時は手伝ってもらっては駄目なんですよ。

忙しくなくて自分でもやれる時に、一緒に傍に居て仲良く教えるんですよ」

「げー、そんなことしたことねー」

「今度やってみて下さいよ。いろいろ話してコミュニケーションがとれますよ」

「ひえー、目からウロコ!」

 

だけど、元々の性格もあるって!

彼女の旦那さんは、普通の男みたいに挨拶しないちゃっても機嫌悪くなんなそうだし、

気が付かないで無視しちゃっても、放っておいても平気だし、

大袈裟に誉めたりお礼をいわなくても大丈夫っていう安心感があるもの。

気配りしてても押し付けがましいところがないし、逆に大袈裟に誉められたら照れて赤く

なってあんまり話題にされること嫌がるし、

きっとあの人は人が喜こぶことは求めていても、誉められたりすることは

そんなに求めていないと思うよ。

そーだよ、元々の性格もあるって! そーじゃなかったら、あたしが悪いってか!

ん!?

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