大ムカドン市役所に現れる

 

またもや元気に大ムカドンがやって来た。

 

「勇蔵よ、お母ちゃん市役所でも挨拶されるようになっちゃったよ」

「なんでだよ!?」

 

「この間、振り込みの手続きでお母ちゃん、市役所さ行ったのな、

そしたら混んでて、なかなかお母ちゃんの番になんなくて、しばらく待ってたんだよ。

ああいうとこは見でっと、いろんな人がいんのな。

 その中にこ汚ねえ恰好した、すこーし、こっ足んねえような人がウロウロしてで、

何か聞いて回ってたんだわ、そんで、受付であっちだって言われてそこに行くと、

今度はこっちだって言われて、あっちウロウロこっちウロウロしてて困ってんだよ。

それ見てたら、何だかお母ちゃん腹が立ってきちまってな」

 

「おっ!それで、また出でったのか!?」

 

「いや、出でってやっぺと思ったら、見るからにしっかりした感じの人が

『どうしたんですか?』ってその人のそばさ行ってな、丁寧に教えてやったんだわ。

そしたらその人、すぐに分がったみてえで『ありがとうございます』って

何回も頭下げて喜ごんでたわ」

 

「そりゃあ、良かったな、今回はお母ちゃんの出番は、なしだったか!」

 

「いやー、それがよぉ、やっぱし出でっちゃったんだなあ」

 

「なんで!?」

 

「そのしっかりした人のどこさ行って、

『いやー、あんた、あんたが市役所の職員になりな!!

この人、わかんねぇがらって聞いてんのに、さっきから見てれば、あっち行かされ、

こっち行かされ、それでもわがんなくて埒があがねえでいだのが、あんたが説明したら

一発で分がったんだがら、あんたみたいな人が市役所職員になったらいいんだ!!

あだしだったら、あんたみたいな親切な人に市役所職員になってもらいてぇ』って

お母ちゃん大きな声で言ってやったんだわ」

 

「ゲッ、やーめてくれよ、恥ずかしいよぉ」

 

「うん、その人も顔赤くしっちまって、『そんなことありませんよ』って言ってたわ。

んだけど、そのきったねえ恰好の人は

『そうだよね、奥さん、そうだよね』って言って喜んでたぞ。

そしたら職員ら、急にピリっとしちまって、あだしの番になったら親切だわ、親切だわ、

今まで、お母ちゃんあんなに良く面倒見て貰ったことはねえぞ。

それから、あだしが行くとみんな挨拶すんだわ」

 

「あー、もうお母ちゃんとは、絶対、市役所には行かねぇぞ。」と勇蔵は叫んだ。

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