噂話

 近所に噂話が好きな人がいる。

その人がやって来て、最近亡くなった人の話しを始めた。

そこの、子供は〜に勤めていて、奥さんは〜の仕事をしているから人生設計に抜かりは

ないだろうというその人の憶測から始まった話は、

その人が生きている時に、こういうことがあった。ああいうことがあった。

新しい家を建てたが、こういう問題が起きていた。

などと、まるで見てきたかのようにその家庭の内情に詳しく、その人の見解が総てである

かのように聞こえた。

その話し方はとても失礼な気がして、それを聞いていた私は、気分が悪くなって眠くなっ

てきた。

「ごめんね。そういう話、好きじゃないの」と言うと、

「そういう話しじゃなかったら何の話をしたらいいのよ。

そんなこと言ったら何の話も出来ないでしょうよ、面白い話出来ないでしょ?!」と

その人は言った。

「えー、いくらでもあるでしょうよ。映画の話だって、本の話だって、音楽や社会の話

だっていくらでも面白い話はあるでしょうよ。

それに今言ったこと興味ないから、この次は全然覚えていないと思うよ」

「あたしは記憶力がいいから、全部覚えてしまうのよ」

「そう、私は努力して覚えないようにしてるんだ。

だって、覚えていると話したくなって、そういうこと話すのは、その人に悪い気がするか

ら…」

「ふーん、いい性格だね」と、彼女は皮肉で言ったのだろうが、

「うん、自分でもそういう性格、気に入ってるんだぁ」と私は言った。

 

私は、何処の誰がどうしたという記憶を消すようにしているが、以前に誰かの噂をした

という濡れ衣を着せられたことがあったので、その人には予防線を張った。

 その人は、家族について質問してくる。

子供は何処で何をしているのか、親は何処に住んでいるのか、以前は何処に住んでいて

何処の学校を出て、どんな職業をしていて、何時結婚したのか。

 面倒で答えたくないが、無視も出来ない。

話せば、きっと知ったかぶりで、他所に行って話すのだろうと思うと気分が良くない。

 しかし、きっと、もう彼女は私の所には来ないだろうと思った。

 

 以前に行った洋服やで、何処の人かと聞かれ自分の仕事の内容を言ったことがある。

すると、私が知っていそうなお客さんの名前を次々に言い、その人たちの話しを始めた。

その時も、「人の名前は覚えないようにしている。

何故なら、他所で名前を出したくないから」と言った。

 

閑古鳥の美容院がある。

そこは噂話しが好きで、客が引いてしまったためだと聞いた。

 

 信頼の置ける自分でありたい。と思う。

でーも、こんな書き物をしてるんだよなぁ。いいのかなぁ。

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