翼状片(よくじょうへん)

 

 「ヨクジョウヘンって何よ!?」と最初その名を聞いて思った。

私の左眼、鼻寄りの白目に小さな白いカタマリが出来たのは何年前のことだろう?

特に痛みとか違和感はないのだが、序所に大きくなってきた。

黒目にかかってきたので気になって、昨年メガネ(老眼鏡)を作りに眼科に行った。

今はメガネは眼科で作る時代になったんだねぇ。

そこで翼状片という名前を知った。

 

 年を重ねると身体のあちこちに脂肪が滞る、その一端らしい。

放っておいても支障はないが、黒目の瞳の上に乗ってくると視界を遮ることになる。

 簡単に取れると聞いた。じゃあ、取ってしまおうと決めた。

ある眼科は、来院したその場でチョイチョイと取ってしまい5分もかからないと聞いた。

 知人の80歳代のお父さんもそこで簡単に取ってきたという。

(じゃあ、私もそこでいいや)と思っていた。

 ところが、夫が「面倒臭がって簡単に考えるのはどうかと思うよ」と言う。

「じゃあ、何処がいいっていうのよ」と世話になりながら威張る女房。

そこで夫が見つけたのが、東京の大きな有名病院。

“コンビニ”は、そこの病院に行った(連れて行ってもらった)時の話だ。

朝8時頃に病院に入り(送ってもらい)、待つこと5時間。診察は、1時過ぎだった。

 そして、言われた内容が「ここの病院は、こんな簡単な手術はしません。近くの病院で

やってください」だった。

 ナルホド、そこは重症重大な病気の人が遠くから来る病院で、待っている間に自分は

場違いだと気が付いていた。

「どうして、ここに来たんですか?」と先生に聞かれ

「主人が眼は大事だから良い病院にって、此処に連れてきたんです」

「いい御主人ですね」

「はあ」

 夫は、そこの名医であるK氏を指名しろと言っていたが、冗談じゃない。

私の眼は病気のうちに入っていなかった。

 

(やっぱり、アノ行ったらすぐにチョイチョイと取ってくれるというアソコに行くか)と、

考えていたら、そこの病院で白内障の手術をして見えなくなったという話が続出。

 やっぱり、行ったらその場で「やりますか?」と聞かれて検査も満足にしないでソク

手術だった。そして、見えなくなってしまったという。

「いくら後悔しても、終わってしまった、済んでしまったことは取り返しがつかない」

「やったことは、やらなかったことには出来ないんだ」とその人は肩を落とした。

 キャー、怖い!

 

色々病院を調べ、そこの先生は良いと思うよという話を聞いて、S病院に決めた私は

今回も夫に連れて行ってもらう。世話になりながら、感謝の気持ちを見せない女房。

 

 変わった名前の先生は親切で優しく、待っている時に漏れ聞こえた70歳代の女性

なんぞは、先生と話ししたくて来てるんじゃないかって感じ。

 人を馬鹿にしたところがなく、説明が丁寧で安心した私は、すぐに手術を決めた。

「あなたの言う通りこれは翼状片ですね。このままでも、支障はないのですがちょっと

盛り上がってきていますね。取りますか?」

「ハイ」

「取るにあったって、検査があります。それを今日はやっていって下さい。

それから、脂肪を取るのは簡単なのですが、取ってもまた出てきてしまうので

白い部分を剥ぎ合わせる、まあいってみたらパッワークのようなものですね。

それを行います。脂肪を取るのに5分剥ぎ合わせるのに10分位と思ってください。

前日は準備のために、手術の後も痛んだりしますので入院してもらっています。

大丈夫ですか」

「ハイ」

「何か心配はありますか?」

「あのぉ、私、結構しっかりして見られますけど気が小さいです。

歯医者で気を失ったことがあります」

「そうですか、分かりました」

「喧嘩は強いです」

先生は「ふふっ」と笑った。

 

 さて、明日8日は病院だ。

 

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